8-11 三つ巴の闘い
俺は【マジックバッグ】から布を取り出し、口布をする。
――さっき俺らが睡眠蝶の幼虫から手に入れた誘眠材の素を振り撒けば、きっと眠らせることができるはずだ!
風属性の魔法は使ったことはないけど、魔法はイメージ! 風に乗せて熊に嗅がすことができれば、おそらく……!
亮とポチが敵対心で気を引いてくれている今だ!
「ウインド……」
風魔法を使おうとした、その時だった。
――ピコン!
『探索魔法により感知。危険度パープル。敵、2体。1分後に遭遇します』
「――嘘、だろ……?」
「どうした、創太ッ!」
「多分、ピギーウルフだッ! 1分後に遭遇するッ」
「マジ……かよ……」
おそらく、熊にもわかったんだろう。俺たちとやり合っている場合ではないと。
親熊は小熊を抱え、この場から逃げようとした。
――でも、時はすでに遅かった。
「グルルルルルルルルル」
「マジできやがった! 創太、ポチ! 俺が敵対心でなんとかするから……って、エ……」
そういう問題じゃなかった。
ピギーウルフが最初から狙っていたのは、小熊だった。おそらく、ピギーウルフにとってはご馳走なんだろう。ピギーウルフの口から滴る涎が、それを物語っている。
「どうす………………る…………」
どうすることも、できなかった。
囮になった親熊は瞬時にピギーウルフに首元を引きちぎられ、もう一体の……おそらく母熊だろう、は身を挺して子を抱きかかえ、うずくまった。
ピギーウルフに一方的にちぎられていく肉。弱肉強食とはこのことだ。だけどこれは、見ていられない。
「創太、悪い。俺、見てらんねぇよ」
「俺もだ」
亮は父熊に貪りつくピギーウルフを雷鳴剣でズタズタに引き裂いた。
俺は、先ほど撃つはずだった風魔法を、今も母熊を嬲り殺そうとしているピギーウルフへ向かい放つ。最高速度で、まっすぐに。
「ウインドカッター!」
木のロッドから、風の刃が複数飛び出す。ピギーウルフが母熊を噛み殺したように、俺も無数の風の刃でピギーウルフを切り刻んだ。
俺たちは、
《ドロップアイテム》
・ピギーウルフの肉
・ピギーウルフの毛
・ワイルドベアの肉
を手に入れた。
「小熊は……」
死んだピギーウルフを【マジックバッグ】へ収納しながら、母熊をどけてみる。――やっぱり、母熊は間に合わなかった。
「クソッ、俺らがもっと早く行動してれば」
嘆く亮。
しかし、あまりに一瞬の出来事だったので、俺たちにはこれ以上、どうすることもできなかった。
――ピコン!
――ピコン!
――ピコン!
『――レベルが上がりました。
――レベルが上がりました。
――レベルが上がりました』
レベルが上がっても、虚しく感じる……。
今まさに、目の前で小熊が親熊を欲しているのだから。
「クウウウ、クウウウ」
これが弱肉強食か。これがモンスターなのか、と思うくらい、異世界は残酷だ。
小熊は、泣きながら所々喰われた母熊と、貪り喰われた父熊を揺すり起こしては、泣き続けた。
「どうする、創太」
「飼えないかなぁ、ポチみたいに」
俺は、小熊に手を差し伸べてみた。
「俺は鈴木創太。両親のことは、助けられなくてごめん。でも、仇は討ったから……」
「グルルルウ!」
――シャッ!
「痛ッ!」
「創太!」
「グルルルルルルルルル! ワンワンッ!」
俺は小熊の爪で、腕を切られた。
血が滴る。ヒールで治すこともできるけれど、今はこの小熊を落ち着かせることのほうが大事だ。
俺は、もう一度小熊に手を差し伸べた。
「良かったら、一緒に来ないか? 悪いようにはしないよ。お前のこと、食べたりもしない。どうだ?」
「ほんとうに、たべない?」
「ああ、食べないよ」
「⁉︎ 創太、お前、小熊の言ってることがわかるのか?」
「ああ、固有スキル、テイマーのレベルが上がったみたいだ」
「そうか……。俺には、クルル、としか聞こえないよ……。やっぱりすごいな、創太は」
「もう一度言うよ。お前も来ないか? 1人では、生きていけないだろう? 守るって、約束するよ」
「い、いく……」
「よし、行こう。怪我したところはないか?」
「ぼくは、ない。ひっかいて、ごめん。そうた」
「いいよ。すぐ治せるから」
「――! じゃあ、とうちゃんとかあちゃんをなおしてくれよ! きず、なおせるんだろ?」
必死に小熊は訴えてくる。瞳に、涙を浮かべながら。
「ごめん……。それはできないんだ……。死んでしまったものは……」
紡ごうとした言葉に、ハッとする。
俺の脳裏に、万象の女神フレイヤの言葉が思い浮かんだ。
『死んでしまった者は二度と生き返ることはない』
俺も自然と、小熊に言おうとしていた……。
俺は、小熊を抱きしめて……、深く深く……深い闇の底へと堕ちた気持ちで、泣き続けた。
「創太……」
俺たちは、無言で親熊たちの墓を作り、弔いを捧げた。
-----------------------------------------------
【名前】 鈴木 創太
【称号】万象の女神フレイヤの寵愛を受ける者
はじまりの錬金術士
【性別】ヒューマン 男
【職業】Lv.18/錬金術士
Lv.25/魔法使い
【体力/HP】2500/2600
【魔力/MP】6280/6400
【戦闘スキル】
錬成アイテム:Lv.14 /♾️
殴る: Lv.5 /♾
魔法(雷属性):Lv.18/♾
(風属性):Lv.3 /♾
(炎属性):Lv.15/♾
(水属性):Lv.1 /♾️
(土属性):Lv.1 /♾️
(闇属性):Lv.1 /♾
(光属性):Lv.13/♾
【固有スキル】
錬金術:Lv.23 /♾
錬成知識:Lv.24 /♾
テイマー:Lv.20 /♾
鑑定:Lv.12 /♾
探索魔法:Lv.13 /♾
-----------------------------------------------




