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8-10 輝く夜明けとガラスの砂と


「そうだ! 創太に来て欲しい場所があるんだよ!」


 まだ夜が明ける前、ダイニングテーブルに突っ伏して寝ている俺に亮は言った。


「んあ? 爆発するパイでも見つかったのか?」

「はぁ? 物騒なこと言うなよ! 縁起でもない。めちゃくちゃ綺麗な場所があってさ、多分錬金術にも使えるアイテムだと思うんだ。……あるひにも、見せたいくらい綺麗なんだよ」

「よし、行こう」


 ◇


  ーー黎明の薄い光を感じながら、俺たちは錬金素材アイテムの採集作業のために、野営地、森の窪地を後にした。


 森の奥深く、山陵が眼前に広がる頃。


 山陵の一部の苔むした岩肌から、清流が優しい滝となって翡翠色の滝壺に吸い込まれるように落ちてゆく。

 滝壺を囲むように大小の灰色の石が芸術作品のように並べられ、さらにその周りを色彩豊かなガラスの砂が囲んでいた。

 陽の光が木漏れ日となってあたり一面に差し込んで、ガラスの砂に反射してキラキラと眩く光り輝いている。


 ーーそう。まるで輝く夜明け。


 俺たちは「ガラスの砂地」で輝く夜明けを迎えた。


「なんだここ! めっちゃ綺麗じゃん!」

「それに、踏んでみてくれよ」


 ……サクッ、サクッ!


「おおお! 踏むとガラスの砂が擦れ合ってめっちゃいい音がする〜!」

「だろ? 昨日の魅惑草も綺麗だったけどさ、ここを前ポチと見つけて。創太を連れてこようと思ってたんだよ」


 ポチは肉球を痛めてしまうので中には入らず、俺と亮は夢中になってガラスの砂を踏む感触を楽しんでいた。


「どうだ? 使えそうか? 錬成に」

「使えると思うよ。例えばホラ、食器とか。金平糖みたいな形にして、投げたら爆発するような爆弾もいいな」


 亮はピタッと動きが止まる。


「なぁ、錬金術士って爆弾に魅了されるわけ? みんな」

「みんなは知らん。前例が俺しかないからな。でもさ、錬金素材アイテムの分量によって効果が違うアイテムができる……それを追求するのが楽しいんだよ! 爆発の一歩手前で止めるか、それともやってみるか! とかさ」

「うへー。俺には無理だ。細かいことよりも、力に任せて闘うほうが好きだわ」


 俺たちはガラスの砂を採集しながら語らった。


「このガラスの砂でさ、小瓶とかも作りたいじゃん? 液体入れられるようなさ。あと普通に入れ物も。今はただ、ガラスの砂をザザーッとバッグに詰めてるだけだし。まぁ、なかで分類されるから良いんだけどさ。……なんとなく……あるひにかかったら嫌だなって」


 俺も亮も、手をピタリと止める。


「フレイヤの言うとおりなのかな。あるひのこと」

「生き返らないってヤツか?」

「……うん」

「俺はせっかく錬金術士になれたんだ。諦めないよ、最後まで。だってそのために、外の世界への抜け道に行くんだもんな、俺たち」

「そうだな」


 亮の顔はパァッと明るくなった。

 昔から、俺たちはあるひが大好きだ。ずっと3人で過ごしてきた。恋愛感情として好きだって気がついた時には、殴り合いのケンカしたっけ。

 でも結局、どっちがいいか決めるのはあるひだろってなって、2人ともボッコボコの顔して帰って、あるひに心配されたっけ。

 ……懐かしいなぁ。

 入院のたびに、お見舞い行って。

 退院のたびに、パーティーして。

 俺は、諦めない。

 あるひを取り戻すためなら、禁忌だって犯してやるさ。


  ――ピコン!

『探索魔法により感知。危険度パープル。敵、3体。3分後に遭遇(エンカウント)します』


「――⁉︎ 亮、どうやら敵らしい。3体だ。……でもピギーウルフじゃないと思う。動きがそこまで速くなさそうだ。遭遇(エンカウント)は3分後」

「わかった。ガラスの砂の上だとポチは歩けないし、少し移動するか」

「ああ」


 俺たちは開けた場所へと移動した。


 ――来た!


「熊……か?」


 そこにいたのは、二足歩行の茶熊だった。胸元に大きな白いバッテンの模様がある。黒く長い爪に、真っ白な牙、紅い目。両手を上げて、威嚇している。


「鑑定!」

 ――ピコン!

『●ワイルドベア

 二足歩行の熊。逞しい腕から繰り出される素早い攻撃により敵を爪で捕獲し、牙で噛み付く。武闘派。家族で行動することが多い』


「亮、爪で引っ掛けて牙で攻撃してくる武闘派らしい。家族で行動することが多いって言うけど……。――! あそこか!」


 多分、両親と子どもの熊だろう。2メートルくらいの両親の足元に、30センチメートルくらいの小熊が隠れている。


「戦いづらいな……逃げてくれねぇかな」

「あぁ、ほんとに。ホラ! あの第一弾のパイねぇの? あの、三日三晩苦しむパイ」

「ない。俺たちが食った」

「うぷっ」

「お前なぁ……」


 そんなことを話している間に、子どもを残して親熊が攻めてきた。


「クソッ! 倒したら後味悪いぞこれは」


 ――せめて、気絶させることができれば……!


「そうだ! 亮、ポチと離れててくれないか? でも、敵対心(ヘイト)で気は引いといてほしい」

「無茶言うじゃん。何か考えがあるんだな?」

「あぁ、()()()()()()()()()()

「成功確率は?」

「50%」

「黒いパイよりは?」

「自信あり!」

「じゃあ、やるっきゃねぇな! 行くぞ! ポチ!」

「ワンッ」


 ――俺の想像が間違ってなければ、きっと上手く行くはずだ。


 俺は【マジックバッグ】に手を入れる。


「よし! いっちょやってみるか!」

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