8-9 魔法剣士の戦闘スキル
――あるひに良いところを見せたい、か。
その気持ちは痛いほどわかるよ、亮。
亮は長剣に雷鳴を纏わせ森の窪地の木を目指して駆け始めた。
まず1体目。活動を始めたばかりの幼虫で動きが鈍いヤツから制していく。容赦なく、一刀両断。
――バリバリバリッ。ビシャッ!
切った断面から、紫色の汁が飛ぶ。
亮はサッと跳び退いて避け、更にもう一閃。
今度は真横に薙ぎ払う。
「ふう。まずは1体」
「す、すごい……」
「2体目はなかなか動きが軽快なヤツっぽいけど、ピギーウルフとじゃ比べものになんないんだよな」
と言いながら、幼虫の口から吐き出された糸を断ち切り、側面から叩き切るように一撃を入れる。
俺とポチは安心感からか、もうすでに高みの見物で……。
「亮〜! 悪いけどその木綿の系、錬金素材アイテムで使うからよろしくなー!」
なぁんて、要望までチャッカリ伝える。
「……たく、人の気も知らねぇで」
最後の1体はやっかいそうだった。
ピギーウルフとは比べ物にならないとはいえ、動きが他の2体とは明らかに違う。『蠢く』と言い表すのが正しいだろう。
――そういえば、戦闘中に固有スキル使ってみたらどうなるんだろう。
「鑑定!」
――ピコン!
『【警戒】毒を持つ体毛を四方八方に飛ばして自爆しようとしています』
「亮! ……そいつは……!」
「大丈夫。察しはついてる」
亮は高く飛び上がって、剣を幼虫へ突き刺さん勢いで構える。
「雷鳴剣!」
――ドゴオオオオン!
その名の如く、剣から雷が落ちた。
亮の方が一歩早く、幼虫の自爆は失敗し、亮の戦闘スキル、魔法剣(雷属性)で幼虫は飛散した。
「すごいよ、亮」
「ワンワンッ」
亮は満面の笑みでVサインする。
――なぁ、あるひ、見てるか? 俺たち、こんなに強くなったんだぞ。あるひも、居たらよかったのにな……。
亮はもちろん、レベルが上がる。
申し訳ないけれど、俺の固有スキル『鑑定』で勝手に見えてしまう。
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【名前】 加賀 亮
【称号】万象の女神フレイヤの加護を受ける者
【性別】ヒューマン 男
【職業】Lv.6/武闘家
Lv.4/魔法剣士
【体力/HP】143/180
【魔力/MP】69/120
【戦闘スキル】
敵対心:Lv.8
剣技: Lv.6
魔法剣(雷属性):Lv.5
【固有スキル】
多種多様な武器の使い手:Lv.3
怒り:Lv.2
大工:Lv.1
解体:Lv.1
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幼虫のいた場所に、キラリと光るドロップアイテム。
俺たちは、
《ドロップアイテム》
・睡眠蝶の幼虫の毒針
・誘眠材の素
・木綿の糸
を手に入れた。
「お疲れ様、亮。怪我していないか?」
「見てのとおり! お前のほうがすごいけど、俺だってやる時はやるんだぞ?」
「俺のほうが、とかそんなんはないよ」
と、俺が謙遜すると、
「俺にはあんな爆弾は作れねぇ」
と、初めて錬金術で作った【アップルパイ】を茶化して言う。
「コノヤロー! 爆弾じゃねーし! 三日三晩苦しんだけどな、俺たち」
「はははは。だろ? そういう意味でも適わねぇよ」
「――ん?」
談笑していたら、【マジックバッグ】から異変を感じる。ゴソゴソ、ガサガサ動いている。まるで日本のG(ゴキ◯◯)みたいに。
「うおっ!」
――ガサガサガサガサ――!
先程一斉に【マジックバッグ】へ避難してきた魅惑草の殆どが、再び地に根を張ってカラカラサラサラ揺れている。
「お前ら、現金すぎんだろ……」
「意地でも逃げようとしたあたり、ここが定住の地ってわけじゃないんだな」
「お前、草の気持ち推し図りすぎ……」
「なんとなく、そんな気がしてさ」
――ピコン!
『レベルが上がりました』
どうやら、テイマーのレベルが上がったらしい。魅惑草はモンスターではないし、ポチのようにペットでもない。俺には今一つ、テイマーの定義がわからない。
「んで、どうする? 日、暮れてきたけど」
亮に言われてみれば、あたりはすっかり夕暮れ時だった。この森の中での夕暮れ時は、まさに逢魔時と言う言葉が相応しいだろう。
「俺たちってさ、一応休まなくても活動できるじゃん? 不老不死だし。でも、疲れるものは疲れるよな。今日はMPの関係で家なしだけど、ダイニングテーブルやらなんやら出して、野宿しないか?」
「それいいな。……まだ、不老不死って言う感覚自体ないしな。疲れたし……。ピギーウルフの肉と、そうだな……。爆発しないパイが食べたいな」
亮は笑いながら言う。
「まだ言うかっ!」
――ふむ。でも、爆発するパイか……。実際にあってもいいかもしれない。
研究を重ねてみるか、と内緒で心に誓う俺なのであった。




