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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

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短編ホラー

合い言葉

作者: 壱原 一

□と下校中、隣の車道を大荷物かつ猛スピードの軽トラックが通過した。荷台から何か黒いもったりした物がみ出して垂れて千切れて落ちた。


それはぎくしゃくぼこぼこうごめいた後、知らないおじさんの見た目で立ち上がり、出来栄えのチェックを求めるみたいに物問いたげな表情を此方こちらへ向け、よちよち歩み寄って来た。


自分は全身に鳥肌。□は放心して絶句。


ブザー。通報。まず逃げなきゃと□の手を引いて走り出し、残業と夜勤で両親の居ない家へ着いて不安と混乱の夜を明かす。


翌朝疲れて寝ていたり出勤を急いでいたりする親達にろくに話せず登校する。


昨日あれを見た道の近くでたまに見守りをしてくれているおばさんが、今朝は妙に誇らしげな笑みで大きめに挨拶を繰り返し、自分達が通り過ぎるなりぎこちなく後を付いて来る。


校門前で警備員さんが止めて、駆け付けた教頭先生に気にせず校舎へ入りなさいと言われる。急いで教室の窓から見ると騒ぎは収まったようで誰も居ない。


放課後、今日は集団下校しますと自分達の集団へ付いた学年主任の先生が、普段のしかめ面をにこにこさせて自分や□に目配せしてくる。


近所の子の親が出迎えに来て先生へ挨拶している隙に、素早く□を呼び寄せて家へ引っ込む。怯え切った硬直がけてさめざめ泣き出す□を、合い言葉を決めようと慰める。


多分あの変な黒いもったりした物は自分達に目を付けていて、おばさんや先生は乗っ取られてしまった。


少しずつ近付いていて、遠からず家に来るだろう。


明日は自分が委員会で□と一緒に下校できない。帰って来た自分が合い言葉に答えなかったら、すぐ隠れてお父さんお母さんを呼ぶんだよ。


*


翌放課後帰宅した所□の方が帰っていない。


取り急ぎ親に連絡してやきもきしながら待っていると、玄関チャイムが激しく鳴らされ合間にドアが叩かれる。


お□ちゃん開けて開けてと□の大声が聞こえる。


何かあって帰りが遅くなりあれに追われているとして、怖がりで泣き虫の□がこんなにはきはき出来るだろうか。


唾を飲み合い言葉を問い掛けるも、怒り狂った喚き声と共に一層ドアが騒ぐばかり。


決断し兼ねた数秒の内にふっと音が絶え沈黙が続き、やがて震えがちに引きった合い言葉の答えが返される。


ひっ… ううっふ ふ ふうっ… ***… ***…


いつも通り泣き出してしまった。


いやこれはもしかして笑っている?


動けずにいる玄関の先で、慌てて帰った両親が□を呼ぶ声が聞こえる。


玄関の鍵が開く。



終.

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