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最初はジェフと並んで大人しく歩いていたヒナタだがここは異世界。
あちらこちらに見た事の無い物、不思議なものが存在している。
「ねえ、ねえ、あの家の屋根の形、なんであんなに複雑なの?
あそこまでする必要ある?
あっ、あっちのはあんなにトンガってる。あんなにツンツンだと
鳥が刺さっちゃいそう!」
「ああ。私もこの国は初めてだからあんな形は見た事が無いな。
いくら尖がってても屋根に鳥が刺さるなんてことは無いだろ?」
「それは物の例え。真面目に受け取ちゃだめだよ」
「あっ、あの木何かなってる。何の実だろう。食べられるかなあ。『鑑定』
げっ、あんなに美味しそうなのに毒がある。鳥とか食べたりしないのかなあ」
「ヒナタは鑑定魔法も使えるのか?人前では使うなよ。
誰かに知られたら大変だぞ。」
「大丈夫。ジェフさん以外の人がいるところでは他の魔法も内緒で使うから」
久しぶりの屋外、それも何とか解放された安堵感もあり
自然とテンションが上がる。
「ヒナタ、朝からはしゃぎ過ぎると昼にはバテてしまうぞ。
今日は何とか次の街まで行って宿に泊まっておかないと
王都から離れるほど野営が増えるぞ。」
「大丈夫。体力には自信がある。ここへ来てから疲れ知らずになったみたい」
「ヒナタは良いかもしれないが私はあまり歩いて旅したことが無いから
付き合いきれないぞ。」
「そっか。ごめんなさい。自分の事しか考えていなかった。
他にも気をつける事が有ったらちゃんと言ってね」
「ああ。でもまあ、あまり気にするな。
今日はしょうがないな。久しぶりに解放されたんだしのんびり行こう。
それにしても昨日までとは打って変わったように年相応の話し方だな」
「へへ、連れて帰って貰えるように猫被ってた。」
「ねこ・・・を被ってたのか?」
「僕の国の例え言葉。いい子に見せかけてたって事」
「悪い子なのか?」
「大人しくしてただけ。悪い子?ではないよ。たぶん」
カルディス王領を抜けた先にある街を目指し旅を続ける。
街道沿いに歩いて行くと小さな町が点在している。
辺境に近くなると宿場町は歩いてほぼ三日、馬車なら一日で着く距離にある。
辻馬車は王都近くなら珍しくもないが、地方へ頻繁に出かけるのは
行商人くらいだろう。
ジェフェルは馬車で来たが帰りは単独行動なので後発隊の為に置いてきた。
運が良ければどこかで拾って貰えるだろうがあてには出来ない。




