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スエット姿の召喚者  作者: こんぺき
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昼食を終えて暫くしたらジェフさんは他国との対談の為に出掛けて行った。

お腹も一杯になり、うつらうつらとしていると扉がノックされた。

ミカエルさんが戻ってきたらしい。


念のために気配を消してじっと扉を見ていると、

静かに扉が開いて彼が入ってきた。

扉を閉めたタイミングで隠蔽魔法を解いた。


「いるのは分かっていてもなんか変な感じだな。ノックしても

返事が返って来るわけでもないし・・・

隠蔽魔法が使える知り合いなんていないから同じ人間として

違和感しかない・・・」


「隠蔽魔法の使える人っていないんですか?」

「いや、いるにはいるが、そういった特殊な魔法の使い手は国の諜報機関とか

隠密部隊に所属して、外部の人間とは関りを持たないのが普通だ。」

「強制的にですか?」

「国によって様々だな。まあ他人に知られないに越したことは無い能力だから

くれぐれも気をつけた方が良い」

「はい。肝に銘じておきます・・・」


「ところで君はとても良い所の育ちかな?」

「いいえ、一般市民ですよ」

「じゃあ、君のいた世界では一般の少年でも

そんなに丁寧な話し方をするのが普通なの?」


「!! 少年って・・・私の事ですか?」

「ほら、『僕』じゃなくて『私』って・・・

ここでは君位の年の少年はあまり自分の事を『私』とは言わない。」


思わず額に手を当て俯いた。

「私、これでもれっきとした女学生です・・・」

「えっ、女学生・・・何時から?」

「学生になった時からです。私は生まれた時からずっと女ですよ」

「そ、そうなのか?道理で丁寧な言葉遣いに

時々見せる気遣いとか仕草とか違和感があったはずだ」


思い当たる事が有る。時々怪訝な顔とかされていた。

「それにしたって・・・なんで少年だなんて思ってたんですか?」


「いや、君が知らないのも無理はないが・・・

少なくともこの王国では女性の髪は肩より下、腰近くまであるのが普通なんだ。

君の髪型は『男です』って言ってるのも同然なんだ。」


「えー、そうなんですか?私の住んでる国でもかなり昔はそうでしたけど

今は男女共に自由ですよ。短いとやっぱ不味いですか?」

「いや、これからの事を考えると寧ろ良かったかもしれない。

ジェフェルには女の子だって言った?」

「えっ、言ってないですけど・・・聞かれた事もないですね」


「ジェフェルも気付いてはいないだろう。

声だってハスキーボイスで紛らわしいし・・・

気付いていたなら君と一緒に行動するとは思えない」

「何故ですか?」


「実はジェフェルは かなりの 女嫌いなんだ。

全く他人の女の子と一緒の部屋で寝食を共にしているなんて

思ってもいないだろうな。君としては大丈夫なの?」

「それは・・・それなりの事情があったからで

第一、彼はベッドルームで私はリビングで寝ましたし・・・」


「まあ、他に頼れる知り合いもいない緊急事態だったし

許容範囲なのか・・・

スタニア王国では貴族の男女が一緒の部屋で一晩過ごす、という事は

結婚したも同然と思われる傾向があるんだが」

「えー、知らなかったとはいえジェフさんに申し訳ないです。」

「気にするのジェフの事なんだ」


「私はいわば居候でこの世界の貴族でも無いし何も疚しい事はないんだから

そんなに気にしませんよ。

親切にしてもらったのにジェフさんの経歴に傷がついたら申し訳ないです。」


「とにかくジェフェルが気付いていないならこのままの方が都合が良い。

私から旅の間は部屋を別にとるようにうまく言っておくよ。

まあ余程の事が無い限り一度助けた異世界人を

途中で放り出したりするような奴じゃないから大丈夫さ。たぶん・・・」

「うわー、心配になってきた。ジェフさんてどんな感じで女嫌いなんですか?」


「それは・・・まあ話しても大丈夫か。

彼にはね、姉が二人いるんだけど、ジェフェルは見てわかると思うが

小さい頃から整った顔立ちでとても可愛かったらしいんだ。

だからいつも姉たちに着せ替え人形の代わりをさせらた上に

女の子の遊びに付き合わされていたそうだが・・・

同年代の男友達が出来た時に色々と恥ずかしい思いをしたらしい。

それで姉に対してかなり不信感を募らせてね」


「それはまた・・・何というかジェフさんにとっては黒歴史ですね」


「それだけならまだ良かったが、『可愛い』から『カッコいい』に成長した彼を

女性たちが放っておかなくてね。

彼の思いに関係なく周りが騒いで問題ばかり起こしたんだ。

鬱陶しくてついに自他ともに認める女嫌いになった、というわけだ」


「何というか、気の毒ですね。顔が良すぎるのも考えものです。」


「用事もないのに傍に近寄らせないとか、愛想がすこぶる悪いだけで、

蕁麻疹が出るとか、暴力う振るうとかじゃないから

バレない様に気をつけていればいいよ」


迷惑がられる事に対して自分にも心当たりがある。


「君も結構可愛いからモテるんじゃないのか」

「ありがとうございます。でもモテるほどでは無いですよ。

18年間彼氏ができた事ないですし・・・」

「18なのか!?」

「はい。そりゃ少し童顔かもしれないですけど・・・

綺麗って言われるより可愛いって言われるし・・・

女って認識してもらえ無かったことがショックです。」


そう。ショックだ。

高校の時、同級生に告白した事が有る。

それはもう勇気を振り絞って。結果は見事に惨敗・・・

『お前みたいなガサツなのと付き合う気はない』って言われて。

超私好みのイケメンで、『好きです!』って告ってしまっただけで

付き合ってほしいなんて図々しい事は言えなかったのに・・・


それがトラウマとなって、それからの私は

イケメンは遠くからただ拝むだけのモノと決めている。

けして手を伸ばすものでは無い。

相手にとっても迷惑だって、たった今気付いたしね。


「その、なんだ・・・まだ成長段階だし、その服は体形が隠れるから

余計に分かり辛いのも一因だな。

話し方も14、5歳にしてはやけに落ち着いているとは思っていたが、

異世界人という先入観でこういうものかと納得してたし。

・・・ちょっと心配になってきた」


「私がジェフさんを襲うとでも?」

「・・・大丈夫そうか」

「今更ですよ。うまくやっていきます。たぶん・・・

それより接し方とか言葉遣い、少し意識して男っぽくした方が良いですか?」

「いや、今まで分からなかったんだからそのままで良いだろう。

寧ろ態度や話し方が急に変わったら怪しまれる」


「でもミカエルさんには数時間でバレました・・・」

「気遣いとか、時々見せる女らしい仕草の所為だな。

あいつは女の事には毛嫌いして鈍感だから

よほどの事が無い限りは大丈夫だろう」

「わかりました。暫くは14歳の少年を演じておきますよ。

それよりミカエルさんは一緒に帰国しないんですか?

なんとなく心細くなってきました。」


「召喚が行われていた事について少し調べてから後を追うよ。

何も分からないかもしれないが、君がいなくなってからの

動向も把握しておきたい。

他の同行者たちはこの王国に好意的な者が多いから

この国が召喚した君と一緒に帰国させるには懸念がある。

申し訳ないが二人で先行してほしい」


「わかりました。一人で行動する事を思えば心強いです。

ジェフさんもミカエルさんも良い人でラッキーでした。」

「そう言って貰えて嬉しいよ。ジェフェル共々これからよろしく頼む。」

「こちらこそ、お世話になります。」


それからミカエルさんは夕方まで王国の習慣などの事や雑談をして過ごし

ジェフさんと入れ替わりで大使館に帰って行った。


夜を迎え、今日はソファーで眠ることにする。

居候なのに部屋の主のベッドを取るわけにはいかないと遠慮した。


もう寝ようかと準備をしていたが、扉をたたく音を聞き物陰に隠れた。

ジェフさんが扉を開けると魔術師団長が立っていた。


「すまないが人を探している。十代半ばの黒髪に黒い瞳の少年だが

心当たりはないか?」

「・・・いいえ、知りませんねえ。何があったのですか」


「他国の賓客なのだが、神殿で預かっているうちに行方知れずになったらしい。

昨晩まで部屋にいた事は確認できたが、今朝になって行方知れずになった。

もし見かけたら連絡して貰えないだろうか」

「それは大変ですね。わかりました。そうしましょう。

名前は何というのですか?」

「あ、いや神殿長に頼まれただけで名前までは聞いていない」

「わかりました。早く見つかるといいですね」

「ああ。協力、よろしくお願いする。」


ジェフさんが扉を閉めてソファーに腰掛ける。


「そういえばヒナタはいくつなんだ」

「14歳です・・・」

「まあそんなものか。異世界でも年齢と見た目はこちらと変わらないな」


んん~、やはり異世界だと幼くみえるのかなぁ・・・

身長、ほぼ中二で止まって165センチだから成長期の男の子って位かなぁ。


「そういうジェフさんはいくつなんですか?」

「私は23歳だが、君の世界の基準で相応に見えるか?」

「落ち着いているので25歳くらいかと思ってました。」

「まあ、許容範囲の誤差だな。もっと年上に見られたら落ち込みそうだ」


「魔術師団長自ら、密かに異世界人探ししてるんですね」

「まあ、あの様子では見つけられないだろうな。安心して眠れるだろう。

明日の昼には街中を誰にも気兼ねせず国境へ向かっているさ」

「そうなったら安心です。とりあえず見つかる事なくここを抜け出したいんで」


まだ二日目だけど、部屋から自由に出歩ける訳ではないので

『囚われの身』感が半端ない。


「明日の確認だが、朝、王城へ帰還の挨拶へ向かうとき一緒に城門迄行き、

使節団が王城に滞在中はヒナタは城門前から少し先に有る広場で待っていてくれ。

私の謁見が終わり次第、そこで合流して隣国へ向かう。

くれぐれもふらふらと街中の散策などに行かない様に」


「でも、異世界の王都の街並み、とっても気になります。

合流してから少しだけで良いので歩いてみたいです・・・」


「自分の立場が分かって言ってるのか?」


「・・・諦めます。」

「賢明な判断だ。その代わり次の街では状況次第で少しゆっくりしよう」

「ありがとう!楽しみにしてます。」


明日に向けて早めに寝ることにした。




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