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昼休憩を終えてジェフさんはマーシャルさんと大使館関係の仕事で席を外している。
私は簡単な仕分けと計算位ならと、対国友好費の項目ごとの仕分けと各経費の計算をしていた。
扉がノックされ「どうぞ」と返事をしたところへ現れたのは
ニコニコ笑顔の二十歳前後のイケメンだ。
「やあ、君がヒナタだね」
と、いきなり私の名前を口にしながら入室して来た彼に
「はい、そうですが・・・只今室長と補佐官は席を外しております。
失礼ですがお名前とご用件を伺えますか」
と立ち上がって告げた。
「ああ、別にジェフェルさんがいなくても構わないんだ。
僕は医薬部のエイドリアン、エディって呼んで」
ああ、昨日のイクリの実関係の人ね。
でも直接医薬部の人が来るなんて聞いてないし
ちょと馴れ馴れし過ぎるんじゃない?と思っていると
「不思議そうな顔してるね」
と言いながら壁際に置いてある予備の椅子を引き摺って来て
私の臨時机の向かい側に腰掛けた。
「ヒナタも座って」
と言って机に両肘をついて顎を乗せこちらを見つめてニコニコと笑っている。
「・・・」
なんか既視感のある笑顔だ。
「ヒナタって今度イクリの実、取りに行ってくれるんでしょ?」
「まだ何も聞いておりませんが・・・」
「昨日ミカエルさんが相当量のイクリの実を持って医薬局を訪れてね。
みんなびっくりさ。昨日まで血眼になってあちこち探し回っても
手に入らなかったんだから・・・」
私が無反応なのが気に入らないのかちょっとムッとした顔になったので
当たり障りのない合いの手を入れておく。
「そうなんですか・・・」
「・・・」
「それで何処で手に入れた?って聞くじゃん、普通」
ちょっと話し方が崩れてきた。
「”極秘の伝手で手に入れたからそれは言えないが
まだ不足ならあと少しくらいは何とかできそうだ”
なんて怪しい事言うんだけど背に腹は代えられない状況だから
そこは詮索しないって事になったんだけどさ
追加分は少し時間がかかるって事で話は打ち切りになったんだ」
「そうなんですね」
「・・・」
「君ってさ、ちょっと反応悪すぎない?
普通僕みたいなイケメンと一対一で話せるなんてもっとなんかこう
嬉しそうにするとか、目がうるうるするとかさぁ?」
「そうなんですか?だって男同士ですよ?
そんな事期待されても困ります」
「・・・」
「もういいや、女だって事隠してるにしても もうちょっとなんか
はにかむとか反応が有っても良いと思うんだけど」
えー、なんでその事知ってんの?医薬部でも私の事極秘扱いじゃないの?
そこでバタンという音と共にミカエルさんが飛び込んできて
エディさんの頭を結構な力で叩いた・・・
彼は「痛っ!」といって両手で頭を押さえて上目遣いにミカエルさんを見上げた。
「全くお前という奴は。時と場所を選んで相手を口説け!
仮にもここは職場だぞ!」
「別に口説いてるわけじゃないよ・・・」
どうやらイケメンの彼はミカエルさんの知り合いらしい。
「お二人は結構お親しいんですか?」
「親しいというか従弟だよ~」
納得だ。道理で既視感が有るはずだ。




