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落ち着いてきたので心に引っ掛かっている事をそれとはなしに口にした。
「そういえば副官さん、やけにニッコリとした顔で会釈したんだけど・・・」
「ああ、ジェフェルは女嫌いで有名だから変な誤解されたんじゃないか?」
ニヤニヤ顔でミカエルさんが答えた。
「・・・」
「さて、ケーキも堪能した事だろうしそろそろ本題!!」
そう言って立ち上がったミカエルさんがテーブルの脇で突然土下座して
通る声で熱願?した。
「ヒナタ、頼む。君しかいないんだ!」
「な、何ですか急に! そんな事突然言われても困ります!」
「そんな事言わないで私の願いを聞いてくれ」
バタン!!!
と勢いよく扉が開け放たれ血相を変えたジェフさんが飛び込んで来た。
ミカエルさんと二人揃って振り返ったが、彼がしたり顔をしたように見えたのは
気のせいだったろうか・・・
ジェフさんは私達を見て暫く固まっていたが溜息をついて復活した。
「ミカエル、何をやっている?」
呆れたような声で問いかけた。
「いや、昨日の帰りに医療部に寄ったんだがね、まあ座って落ち着いて話そう」
「・・・」
お前が騒がしくしているんだろう!と言いたげな顔で睨みながら
ジェフさんが私の横に腰掛けた。
朝食の時もそうだったけれどどうやらアウトゾーンは免れたようだと
胸をなでおろす。
「それで医療部の奴が ”これから流行するであろう感染症の治療薬が品不足だ”
って話をしてたんだ。」
「それは大変な事だな。王都だけでなく国中の死活問題になりかねない。」
「だろ? それで何でそんな事になってるんだと聞いてみたら
『薬の材料になる”イクリの実”が全く手に入らない、収穫に使うツリーモンキーが
集団感染で全く使えない状態になっている事が原因だ』
という話でね。そこで思い出したのがヒナタの道中のやらかしだ。」
言い方に悪意を感じる・・・
「ヒナタ、イクリの実ってまだ手持ち有る?」
「時価を知りたくてギルドに卸しただけだからまだ結構あると思うけど
でも一本の木から取っただけだから2、30キロってとこかな」
「そうか・・・それで王都で必要な分は賄えるとして
他の領地でも不足するところが出てくると思う。
詳しい事は医薬部の者に聞いてみないと分からないが
もしもの時はヒナタが採取に向かってくれないか?」
「それって近くで採れるの?」
「いや、馬車で往復三日はかかると思う」
「私はかまわないけど、明日からジェフさんの側仕えで職場に
ついて行くことになってるから・・・」
ジェフさんを見上げる。
「私は昨日の件で週末までは屋敷と職場の往復しか許されていない・・・」
「あはは、君を謹慎させると仕事が滞ってしまうからね。
どちらにしてもジェフェルは溜った仕事で暫くは身動きが取れないだろ?」
「往復三日もかかるところに一人で行かせる訳ないだろう」
「そりゃ場所も分からない所だから詳しい者が同行する事になるだろうな。
まあ取りあえずヒナタが持っている分だけでもとても助かるよ。
今からそれを届けて後の事は聞いておくよ」
そう言ってミカエルさんは有るだけのイクリの実を持って帰って行った。
それを見送って朝から騒々しかったから一息入れようと
リビングでジェフさんと二人、向かい合って紅茶を飲んでいる。
「ジェフさんケーキありがとう。凄く美味しかった。
でも何でケーキ?」
「昨日、目の前の青年よりケーキに釘付けだっただろ?
よほど食べたかったんだろうなと思ってね」
「?」
「普通あれだけの美男子を前にしたらケーキなんて目に入らないだろ?」
「美男子?そうだった?」
「老舗宝飾店の看板代わりに立っているほどだぞ?」
「・・・ああ!女性客を呼び込むために・・・」
「なんだ言われるまで気付かなかったのか?」
「全く。それにそんなにイケメンでもなかったし。
毎日ジェフさん見てたらイケメン耐性半端なくなっちゃったかも」
「・・・」
ジェフさんは心なしか照れたような顔でそっぽを向いてしまった。




