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その後お互いの照れもあってか暫く無言で紅茶を飲んでいたけど
ジェフさんが立ち上がって
「夕食は我が国の特産の海産物を使った料理が並ぶと思うから
楽しみにしていてくれ。」
と言いってその場はお開きとなった。
部屋を出るジェフさんを見送りそのままベッドにダイブした。
何も考える事が出来ないまま寝落ちしてしまった様だ。
どの位経っただろうか、ドアをノックする音で目を覚ました。
「ふゃい?」と返事をすると
「お食事の支度が整いましたのでお迎えに参りました。」
とメイドさんの声がした。
バッ!と飛び起きドレッサーを覗き込んで衣服のしわを伸ばす。
手櫛で髪を整えたが前髪に寝癖が付いてしまって直らない。
まあ良いか、
と開き直り扉を開けて廊下に出た。
一瞬メイドさんの目が点になった様に見えたが気のせいだろう。
澄ました顔に戻った彼女に案内されて廊下を進む。
途中で合流し横に並んたジェフさんが
「良く眠れたか?」
と優しく聞いた。何故分かったんだ?と不思議に思ってジェフさんを見上げた。
ジェフさんは顔を背けながら
「頬にシーツの跡が付いている。」
と教えてくれた。
寝癖に気を取られてそこまでチェックしていなかった。
慌てて口元に手をやったがどうやらヨダレは出ていなかったようだ。
真っ赤になってダイニングまで俯いて歩いて行った。
ダイニングに近づくと料理のいい匂いが漂ってきた。
思わずテンションが上がりパッと顔を上げて目を輝かせる。
「本当にヒナタは分かりやすい性格をしているな」
ジェフさんに言われたので
「腹黒イケメンの誰かよりよっぽどマシな性格です。」
と返しておいた。
ダイニングに入り案内された席に着く。
ジェシカさんから事前に聞いた話によると
伯爵ご夫妻は社交シーズン以外は殆んど領地から出てこないそうだ。
ご領主夫妻用の奥のセンター席は空けたままサイドの椅子に
ジェフさんと並んで腰掛けた。
遅れてジェシカさんがやって来て正面の席に着いた。
それを合図に料理が運ばれてくる。
うわー考えてなかったけどここは伯爵家だ。
異世界でなくとも堅苦しいお作法とか全くわからない。
取りあえずナイフとフォークが一対、スプーンが大小一つずつ置かれている事に
安堵した。
「ヒナタを歓迎する意味も込めて今日は堅苦しいのは無しにしましょ。
でも明日からみっちり仕込むから覚悟してね」
「姉上程々にしてください。ヒナタはまだ異世界の普通の生活すら
満足に体験できていないのですから。
くれぐれもヒナタを玩具扱いにする様な事は慎んで下さい。
彼はもう14歳です。」
「玩具扱いだなんて・・・分ってるわよ。14歳なんだから
男の子にはシャツとトラウザーを、女の子にはドレスを着せれば良いんでしょ?
間違っても男の子にドレスを着せたりしないから安心して頂戴。」
「「・・・」」
言い方に不安しか感じない。
しかしすぐに運ばれてきた前菜に心を奪われた。
色とりどりの野菜を縁取りに鯛のような白身の魚のカルパッチョ風なのが
盛り付けられている。
久しぶりの魚料理にテンションが上がる。
先ずは野菜を、とスナップエンドウぽい莢をフォークで刺した・・・
中から飛び出した豆が見事にジェフさんの皿にダイブした。
正面のジェシカさんは慌てて扇子で口元を覆った。
「ご、ごめんなさい兄さん・・・」と横を見上げると
「、、っ、」と吹き出しそうなのを我慢したジェフさんが
またそっぽを向いて真っ赤になっていた。




