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ミカエルさんは何を考えて傍迷惑ないたずらを仕掛けてるんだと
疑問に思いながら食事を済ませ食堂を出たところで宿の人に声を掛けられた。
「もう温泉には行かれましたか?」
温泉!!
「温泉ですか?ここにも風呂は有るのですよね?」
「勿論ありますが、温泉は珍しいという事で態々遠くから宿をとって
お見えになる方もいるものですから一応ご案内をと思いまして」
「ありがとうございます。話に聞いたことは有りましたが
私も温泉は初めてなのでぜひ行ってみたいと思います。」
「外に出るとあちらこちらに案内の張り紙があります。
ここからですと五分ほどですから迷う事も無いですよ。
気をつけて行ってらっしゃいませ。」
そういってカウンターの奥へ戻って行った。
「ヒナタ、せっかくだから温泉に行こう。そんなに時間もかからない様だしな」
ええーっ、行きたいけど絶対無理です!
でも入りたい・・・
「・・・兄さん、僕今日はちょっと具合が悪いかな?
残念だけど先に休ませて貰うから一人で楽しんで?来て」
「大丈夫か?具合が悪いなら一緒にいた方が安心だろ?私も今日はやめて
何かあったらすぐ呼べるように部屋にいよう」
ジェフさんは優しい・・・罪悪感を抱いてしまう。
しかしここは久々の入浴、温泉の為・・・
「そ、それは悪いから兄さんだけでも行ってきて。
万が一を考えて大人しくしてるだけだから。ね?」
「そこまで言うなら行かせて貰おうか。ちゃんと寝てるんだぞ。」
「うん。朝までぐっすり寝ると思うから心配しないで行ってきて」
何とか説得して部屋の前で別れた。
部屋でタオルを頭に巻き付ける。
暫くすると扉がノックされた。
「それでは行ってくるから大人しく寝ていてくれ。」
とジェフさんの声がした。
「うん。大人しくしてる。」
遠ざかる足音を聞き隠蔽魔法を使ってそっと部屋から出る。
鍵を掛けジェフさんを追いかける。
暫く行くとそれらしい建物が見えてきた。
入り口が一つなのでジェフさんが入って暫くしてから魔法を解いて
受付に向かった。
「大人一人」
受付のお姉さんがいぶかし気な顔をする。
あっ、タオル巻いてるからか・・・
「ちょっとぶつけて怪我しちゃって。濡らすといけないから・・・」
「本当に大人?ふつうは子供って嘘つくのに・・・」
そっちか!
「大人です!」
女風呂に向かい脱衣所でタオルが落ちない様気をつけてローブとスエットを脱ぐ。
結構混んでるな・・・と周りを見回して”またか!”と怒りがこみ上げた。
ミ~カ~エ~ル~!!
周りには私より立派な胸を持った短髪の女性がちらほらと混ざっていた。
頭のタオルを取り床に叩きつけたいのをぐっと堪える。
気を取り直し浴室へと向かった。
洗い場で何日ぶりかで体と髪を洗う。
そしていざ温泉へ・・・
ここは異世界・・・初温泉。
しかし濁り湯なだけで日本のそれと変わりは無かった。
湯船につかり隣の親切そうな人に聞いてみた。
「私みたいに髪の短い人って少ないですか?」
「・・・この国は長いのが普通だけど、隣国の平民は短い人も多いって聞くよ。
行商人なんかも手入れが大変だからって短いね。
この温泉の町は隣国の行商人もよく来るからね」
そうか貴族は長いんだ。ミカエルさんは貴族だから知らなかったのか?
いやいや、絶対今頃、騙されて悔しがってる私を想像して
笑っているに違いない。




