①
なんでこうなった?!
いや、今はそんなことはどうでもいい。
先ずこの状況を考えよう。
頭の中で警鐘が鳴り響く。
命の危険は?
ひとまず大丈夫だろう。
状況は?
極めて良くない。
先行きは?
見通しなんて立つわけがない。
座布団に胡坐をかいてポテチの袋片手にアニメ番組を見ていた・・・
そのままの格好で
いきな違和感しかないりローブ姿のご老人らに囲まれている。
部屋に有った物全てが消え去り(もちろん座布団も)
スエット姿の私とポテチの袋だけ・・・が残された???
何処に?
「いやあ、すまんのう。突然の事で驚かせてしまった様じゃ。
おぬし、名は何という?」
『・・・怪しい。新手の新興宗教勧誘か?
ありうる…人員集めに誘拐まがいの事までする様になったとか。
それとも押し売り関係か?しかしボロアパートの住人なんて
お金がない事は火を見るよりも明らかだぞ。』
いやいや、何かもっと違う危険な香りが渦巻いている。
「警戒せんでも良い。けして怪しい者では無い。」
『怪しさ以外の何も無い!
怪しい者でない、と言い切るところが信用できない。』
「あのー、用が無ければ帰らせてもらっても?
今、何も持っていませんし又の機会に、という事で。」
何も持っていないと言った事が不満なのかポテチの袋を睨んでいる気がする。
まだほとんど手を付けていないが、背に腹は代えられない。
「こんなものでよろしかったら皆さんで分けて下さい・・・」
食べるのを楽しみにしていた期間限定ガーリックビーフ味のポテチを差し出す。
差し出された袋を受け取りまじまじと見つめている。
5人で分けるには少なすぎるか・・・
小学生の頃のポテチは余裕で友達と分け合って食べた。
今のポテチは一袋で一人分・・・
でも私だって食べたいのを我慢したんだ。
そこは妥協してほしい。
「やはり見た事の無い文様、形状にキラキラの材質、そして中身の匂い。
異世界からの召喚に成功した事は間違いない様じゃ。」
「おおー、素晴らしい」
「さすが宮廷魔術師団。これで我が国も安泰と言っていいだろう。」
「そこまでは流石に時期尚早でしょうが、懸念材料が減った事には間違いないでしょう。」
異世界からの召喚?
・・・そうか疲れていたからアニメ見ながら寝落ちした、
夢を見ている、そうとしか思えない。
周りの景色だってぼんやり霞んで・・・いない!
はっきりスッキリ、細部までくっきり見える。
太い柱の細かい彫刻、
神殿らしい建物の天井の見事なまでの神々の楽園の絵画。
柱の間から見える手入れされた美しい庭園、
遠くに見える中世ヨーロッパ風の街並み・・・。
夢ではなさそうだ。
そこで私は現実逃避・・・気を失った。




