最終話「虹の向こう側へ」
彼らが再会した丘の上は、かつて戦いの舞台だった場所。
だが、今は草が芽吹き、空は透き通るように青い。
その中心に、黒い虹の残滓が漂っていた。
輪郭すら曖昧で、もう“力”は感じられない。
陸:「……もう、あれには何の意味もないんだな」
美玖:「ううん。意味はあるよ」
彼女は微笑んで言った。
美玖:「“もう一度、選べる”ってこと」
玲音:「そう。私たちは壊しただけじゃない。“選び直すための世界”を創ったんだよ」
◆
深月は静かに頷いた。
かつての自分がどれほど「記録」に囚われていたか、今ならわかる。
深月:「記録される未来なんて、ただの設計図。
でも、今のこれは……白紙の地図。好きに描ける」
晶:「最高に面倒くさくて、不安定で、でも……自由なやつだな」
結人:「自由ってのは不安だ。でも、それでも生きたいと思えるなら、十分だ」
カズサ:「お前ら、なんか……まるで主人公みたいな顔してんな」
みんなが笑った。
◆
陸はもう一度、黒い虹の痕跡を見た。
最初はそこからすべてが始まった――だが、今は違う。
陸:「……俺たちの物語は、ここで終わる。
でも、“生きていくこと”は、これからだ」
彼はゆっくりと手を伸ばし、その残滓に触れる。
だが今度は、吸い込まれることも、押し返されることもなかった。
虹は、ただ風に散り――空へと消えていった。
玲音:「さようなら、観測された未来。
こんにちは、“わたしたちだけの現在”」
そして彼らは、丘を下る。
かつて誰も足を踏み入れなかった、その先の未来へ。
◆
草の匂いが風に乗って流れてくる。
空は青く、世界は新しく、彼らの一歩がその色を塗っていく。
それはもう、誰かに“書かれた物語”ではない。
自分たちで選び、自分たちで失い、自分たちで得た――
「命の重さ」そのものの物語。
その虹の向こう側にあったのは――
滅びでも救済でもなく、ただ「生きる」という答えだった。
第一章 完




