表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
90/92

第八十八話「記録されない未来へ」

「全システム、リンク開放。記録圧力、解除開始」


玲音の声が、ゼロ・アンサーの中枢へと届く。

イグジスト・ゼロにリンクする形で、彼女たちの端末が“記録神経核”へのハッキングを試みていた。


玲音:「いける……“観測領域”が歪み始めてる……!」


美玖:「でもこれ、逆に言えば“世界の軸”が崩れかけてるってことじゃ……!」


玲音:「構わない。私たちの存在は、もはや“記録の中”じゃない。

 記憶と意志、それだけで――未来を掴み取るの!」



陸の操るイグジスト・ゼロが、“第零仮想記録”へと肉薄する。


量子波が弾け、空間がねじれる。

そこに浮かび上がるのは、未来の断片。

だが、その未来の映像は――どれも“死”を告げるものばかりだった。


カズサの散る姿。

玲音が銃口を向けられる。

陸自身の絶叫と、崩壊する都市。


陸:「……ふざけんな。こんなのが未来なもんかよッ!」


映像を貫くように、イグジスト・ゼロの右腕が突き出される。

その拳が、“未来を記録する装置”に届いた瞬間――


ゼロ・アンサー:「観測不能領域への接続が確認されました。

 警告:因果律に矛盾が発生しています」


世界の根幹が悲鳴を上げる。

しかし同時に、その“矛盾”が、可能性の扉を開いた。


玲音:「観測できない未来……それって、私たちが“これから作る”ってことじゃない!」



そのときだった。


『記録から消えた者たち』が、次々にイグジスト・ゼロの背後に集結していた。

晶。結人。深月。そして――美玖のかつての兄。


陸:「みんな……!」


カズサ:「お前の拳、預かったぜ。あとは任せろ。ぶっ壊せ、“決まってる未来”なんか!」


彼らはすでに“記録されない存在”となっていた。

だからこそ、観測不能領域でのみ、真価を発揮できる。


イグジスト・ゼロの機体が、仲間たちの意志と同期する。

陸の背に、複数の残光のような武装アームが展開されていく。


――これは、“存在しない未来”の武装。

誰にも観測されていない、未確定の可能性。


ゼロ・アンサー:「存在不確定因子、収束不能。

 システムダウンまで、あと……」


だがその言葉を最後に、ゼロ・アンサーの音声は切れた。


陸:「これが――俺たちの未来だッ!!」


そして、イグジスト・ゼロの拳が、

記録神経核の中心部に叩き込まれた。



次の瞬間――全てが静止した。


光も音も、時間すらも。

すべてが“記録されなかった状態”へと還元された。


玲音たちの端末が、一斉に再起動する。

だが、画面には“記録なし”とだけ表示された。


玲音:「……そうか。何も、残ってない。けど……」


彼女の手は、震えていなかった。


玲音:「私は覚えてる。陸の声も、カズサの笑顔も、みんなの姿も――全部、心に残ってる」


美玖:「うん……私も……忘れないよ。きっと」



目を覚ました陸は、どこかの丘の上に立っていた。


空は晴れ渡り、風が穏やかに吹いている。

だが――そこに誰もいない。


陸:「……ここが、“記録されなかった未来”か」


彼の手には、誰かのペンダントが握られていた。


何の記録もない。

けれど確かにそこにあった“想い”だけが、彼の胸の中で輝いていた。


陸:「……行こう。誰も知らない、未来の先へ」


彼の背に、風が吹く。

それはまるで――誰かの「よくやった」とでも言うように、優しく背中を押していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ