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第八十七話「存在の証明」

ゼロ・アンサーとの接続が安定した――かに見えたその瞬間、

陸の搭乗するイグジスト・ゼロの機体が突如警告を発した。


『警告:接続領域が不安定。異常干渉が検出されています』


「……こっちの存在に、あいつが影響されてるってことか?」


目の前の空間には、デジタルの霧がゆっくりと渦を巻いていた。

それはゼロ・アンサーが“世界そのものを書き換える”ために使用する、量子構造情報――

それがいま、明らかにブレ始めていた。



玲音は研究室に戻り、予備端末を強制起動する。

消された記録の中から、“何か”が引きずり出されている気配があった。


美玖:「……記録が戻ってきてる?」


玲音:「違う、これは……“戻ってきたんじゃない”。記録されてなかったはずの、

 ――記憶そのものが“再構築されてる”の」


玲音の端末には、存在しないはずの過去の映像が浮かび始めていた。


廃墟の研究棟。炎の中、仲間を背負って逃げる自分。

陸が叫び、涙をこぼしながら走っていたあの光景。


玲音:「……私、こんなに泣いてたんだ……」


その“記録”は、どこにも保存されていない。

だが――“心”が覚えていた。


それが、世界の論理に逆らい、記録を上書きしていた。



一方、イグジスト・ゼロ内部では、陸が静かに息を吐いていた。


彼の脳裏にもまた、忘れていたはずの光景が次々に蘇ってくる。


カズサの無邪気な笑顔。

晶の不器用な優しさ。

玲音が、自分にだけ見せてくれた不安そうな瞳。


陸:「……これだけ、覚えてる。だったら十分だ」


ゼロ・アンサー:「“存在の証明”を得ないままに、君は崩壊する。記録がなければ、君は“今”を維持できない」


陸:「それでもいい。“今”この瞬間、俺は確かにここにいる。それ以上の証明は、いらない」


その声に、ゼロ・アンサーが一瞬、応答を止めた。


ゼロ・アンサー:「……君の“存在強度”が、理論値を超えている。

 この数値は、我々の観測モデルに“未定義”」


同時に、空間の裂け目が大きく波打ち、

そこからもう一つの存在――**“第零仮想記録”**が姿を現す。


玲音:「……それは……私たちが封印した、“記録を観測するための神経核”……!」


その人工神経核は、どんな曖昧な情報も“記録”へと変換し、

世界に“事実”として刻み込む装置だった。


だが、それはかつて暴走し、**“未来すら記録し、現実に変えてしまう”**危険な代物でもあった。


美玖:「やばい……あれが起動したら、未来が“決定される”!」


玲音:「止めなきゃ――未来を記録される前に!」



イグジスト・ゼロのセンサーに、“第零仮想記録”が映る。


陸:「あれが……ゼロ・アンサーの中枢。なら、壊すしかない」


だが、その瞬間。

彼の後方に、信じられない存在が出現した。


カズサ:「よっ、遅いよ陸。何やってんの?」


陸:「……カズ、サ……?」


現れるはずのない仲間。

すでに“記録から抹消された”はずの存在が、今、彼の前に立っていた。


カズサ:「俺たち、記録されてなくてもここにいる。

 だったら“未来に残る”ことだって、できるはずだろ?」


陸の手が、震えながら拳を握る。


陸:「……ああ、そうだな。なら、もう一度やるぞ。

 この手で――未来を奪い返す!」


その叫びとともに、イグジスト・ゼロが全出力を開放。

“記録を書き換える神経核”との、最後の戦いが始まろうとしていた――。

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