第七十七話「世界再定義領域(リライトゾーン)」
都市を喰らう武器《Ω(オメガ)》が起動した。
上空に浮かぶ“逆さの街”がそのまま攻撃兵器となり、現実の構造そのものを上書きしながら拡張を始める。
「このままじゃ、文字通り“世界”が消える」
リ=アの表情は冷静だったが、その瞳には焦燥の色が浮かんでいた。
彼女の記憶――未来から来た存在としての情報――すら、Ωによって“改変”されかけていた。
「これは、過去・現在・未来、全ての時系列を塗りつぶす兵器よ」
「だから“世界再定義領域”……そういうことか」
Ωが展開する結界領域に侵入した瞬間、人は自分自身の存在証明すら失う。
陸たちは、存在が“なかったこと”になる前に、領域内部へと突入する。
結界内部。
そこはまるで、“未定義の空間”。
目に映る景色は常に書き換わり、法則も、色彩も、時間の流れすら意味をなさない。
「武器が通用するのか、ここで……」
「通用させるしかない。俺たちの“物語”を刻むんだ」
陸の《矢》が再び光る。
リ=アがその背後で、彼に“存在記録”を注ぎ込む。
「記録を撃ち込め! この空間に、私たちの存在を刻め!!」
矢が放たれた瞬間、光が空間全体を貫いた。
“書き換えられていた世界”が一瞬、陸たちの知る“現実”の姿を取り戻す。
「効いてる……! だが、まだ……!」
Ωの核へと接近する陸たち。
そこに待ち受けていたのは、《Ω》を制御する存在――かつて“人間”だった少女、《エマ》。
「ようこそ、《再定義》の中心へ。
私こそが、武器の意志そのものよ」
彼女の瞳は、感情を失っていた。
そしてその手には、今なお「自動で進化し続ける武器」が握られていた。




