第七十四話「運命を撃ち抜け、記録外の矢」
イヴの因果修正球が閃光を放つ。
空間ごと、未来が塗り替えられるような圧迫感――それは、存在そのものを否定する波。
「回避行動、無意味。
この一撃は、“お前がそう動くことさえ予測している”」
彼女の攻撃は、いわば“選ばれた唯一の正解”。
そこに、自由意志は介在しない。
だが――
「だったら、その“正解”を、ぶっ壊すだけだ!」
陸が放つ矢は、黒と白の相反するエネルギーを帯びていた。
《リジェネシス》が形を変え、概念ごと“上書きする矢”となって具現化する。
『記録外武装、発射』
矢が放たれた瞬間、空間が裂けた。
イヴの因果修正球がそれを“消去”しようと展開するが――
「“観測”できなければ、存在も否定できねぇんだろ?」
陸の叫びと共に、矢がイヴの目前まで届く。
爆発的な衝突。
因果の修正と、未来の上書き。
ふたつの“世界編集機能”がぶつかり合い、空が歪んだ。
数秒後。
爆風とノイズが止んだ空間に、煙の中から姿を現したのは……陸だった。
「……勝ったのか?」
「……否。まだ終わっていません」
煙の向こう、傷だらけの姿で、イヴが立っていた。
「あなたの力……確かに、因果律の修正を打ち破りました。
けれど、それはほんの一瞬だけ。
私が存在する限り、世界は再び“正しい形”へ戻ります」
「じゃあ……繰り返すだけか」
「ええ、あなたが“この世界に存在する限り”」
陸が静かに構え直す。
「だったら、“俺”がこの世界にいられる意味を、証明してやるよ」
その瞬間、彼の背後に現れた影。
それは、陸自身の“記録外過去”――記憶から消された、ある少女の姿。
「リ……ア……?」
彼女の瞳が、陸をまっすぐ見つめていた。
「あなたが、“世界に殺される理由”じゃなくて、“生きる理由”になるのよ」




