第七十一話「始まりの終わり、終わりの始まり」
完全観測都市。
あらゆる出来事が記録され、全市民の未来が“統制”される都市。
その中心部、「観測塔」。
未来の演算と記録の要となる巨大な構造体に、警報が鳴り響いていた。
「コード:リジェネシス、起動確認。記録ブロックE-09、因果断裂を確認」
「観測不能区域、拡大中。記録プロトコルが書き換えられている……!」
都市を管理する人工演算意識がざわつく。
一人の“観測不能者”が因果の流れを狂わせた。
その事実だけで、未来演算の全体系がエラーを吐き出し始めていた。
その頃、陸とユウリは“外縁区”の廃ビルに身を潜めていた。
都市の“記録”から外れるには、都市システムの網の目をかいくぐるしかない。
「……逃げ切れたか?」
「いまはね。でも、アルシオンは私たちを“観測不能対象”として、都市全域に緊急展開してる」
「あの都市の中じゃ、何かするたびに記録されるんだよな」
「そう。けど、あなたの武器が“観測の網”をぶっ壊した。だから彼らは焦ってる」
陸は、改めて手にした“壊れた武器”を見つめる。
今は「記録武装」として完全再構築され、微かに脈打っていた。
「俺はまだこの武器の力、全部はわかってない」
「でもそれでいい。あなたの“不確定性”が、あの都市にとって一番の毒だから」
そこへ、新たな足音。
ユウリが即座に身構える。
「誰?」
「味方だって言いたいところだけど……まだ信用しなくていい」
現れたのは、漆黒のコートをまとった少年。
片目に義眼、腰には奇妙なフォルムの銃剣。
「観測不能者にして、世界の鍵──《リジェネシス》。ようやく会えたな」
「……あんたは?」
「コードネーム《リレクス》。
反観測勢力の第七部隊。お前らに“協力”しに来た」
「協力?」
「観測の支配が続けば、未来は決して変わらない。お前らの力は“因果の破壊因子”──つまり、唯一の可能性だ」
だがその言葉の直後、外から都市兵部隊の突入音が響いた。
「……さて、説明は後だ。今は――生き延びろ」
一瞬にして始まる銃火と斬撃の応酬。
都市によって“設計された兵士”たちとの激突の中、陸の武器が再び震える。
「また、壊れるのか……いいさ。
壊れて、また強くなるなら――それでいい」
再構築される“記録武装”が放つ、第二の形態。
刃が弓となり、空間を引き裂いた。




