第六十九話「偽りの記録、真実の観測」
「……神代ユウリ。死んだはずじゃ……!」
陸の声が震えた。
過去に確かに死亡報告を受けた少女が、今目の前に立っている。
「死んだわ。あの時、確かに一度は」
彼女――ユウリは静かに言い、手にした“記録の断片”を掲げた。
それは、あの日、陸が偶然拾った“壊れた武器”と対をなすもの。
「私たちは《記録体》として再構成されたの。意識と記憶を、あの時点で完全保存された存在」
「そして再起動のタイミングを……“君”が与えたのよ」
陸の背筋に戦慄が走る。
「……俺が……?」
「“武器”はただの道具じゃない。記録を持ち、記憶を紡ぎ、存在そのものを残す媒体よ」
それこそが《記録武装》の本質。
武器の力を媒介にして、「失われた人間」を“再現”できるシステム。
「そして私は、観測者の中で……その機能を最初に“実用”された個体」
まるで、それはクローン。いや、より高度な“記憶型人間兵器”。
「私はユウリの“写し”じゃない。“ユウリそのもの”よ。記録から蘇った、“意志”なの」
その告白に、観測者の一人が介入する。
「対象《アーカイブ担当・ユウリ》、任務違反。記録改竄の疑いにより、破棄を実行する」
「やれるもんなら、やってみなさい。私は“記録”じゃない。“反証”よ」
ユウリの記録断片が、蒼い光を放った。
《記録武装・ミネアクト 起動》
モード:連鎖干渉・因果切断
その一撃は、観測者の演算による未来予測さえ狂わせた。
「これが“証拠”。観測されるだけの存在じゃ、終われない」
そして陸の中に、眠っていた何かが確かに覚醒する。
彼の手の中の“壊れた武器”が、静かに形を変え始めた。




