第六十七話「神代ユウリ、再起動」
爆心地にほど近いエリア、デッドスペース。
本来、誰も立ち入ることすらできないはずの隔絶空間で、微かに光が灯る。
「……通信ログ確認。対象:記録者《陸》との再接続完了」
機械音のように感情のない声が、徐々に人間らしいイントネーションを取り戻していく。
「ここは……“再構成領域”。ならば……私はまだ、終わっていない」
神代ユウリ。
かつて“記録戦争”と呼ばれる異能力抗争で、最前線に立ち続けた最強の戦術士。
その肉体は二年前に失われたはずだった。
だが、彼女の意識は――記録として、《中央端末》に保存されていた。
「【オーバーライド・ユニット】、起動」
青白い光とともに、戦闘用義体が再構築されていく。
失われた身体は、“記録”をもとに複製された“戦闘特化型適応躯体”。
「もう一度、戦場に立つ。あの男の背中に、追いつくために」
神代は言った。
陸の後ろ姿を、再び見るために。
その頃――
「……あの声、やっぱりユウリだよな……」
崩壊した記録空間を抜けた陸は、かすかに届いた声の主を確信していた。
だが、それがどういう仕組みで可能になったのかは分からない。
「死んだ仲間が、記録として蘇るなんて……この世界、どこまで狂ってんだよ」
そして、陸の前に立ちふさがる影。
黒衣をまとった、異形の武装集団――《観測者》。
「“記録破壊者”陸。君には、まだ死んでもらうわけにはいかない」
「……はあ? そっちこそ、今さら何様だよ」
空気が張り詰める。
再び始まる戦い。
だが今度は、彼一人ではない。
「陸、左45度。展開時間、2.3秒」
唐突に届いた、ユウリの戦術指示。
「っ……本当に、生きてんのかよ……!」
「生きてない。ただ、“再起動”しただけ」
それでも、二人は繋がった。
かつての戦場よりも冷たく、鋭く、そして……確かな“連携”を取り戻しながら。




