第六十三話「記録の中の少年」
空間に浮かび上がる、一枚の映像――
それは、誰も知らない記録。
“存在しなかったはずの過去”。
そこには、幼い頃の城戸陸と、もう一人の少年が映っていた。
「……兄さん、また僕を忘れてるね」
どこか寂しげに、それでいて微笑みを浮かべたその少年の声。
陸の瞳が大きく見開かれる。
「嘘だろ……なんで、俺に“弟”なんて……」
記録の映像は続く。
白衣の男たち、実験施設。
そして“武器を人格に変える計画”――《AW(Armed Will)》プロジェクト。
その映像の中で、陸とその少年は――武器を媒介に、記憶と人格を“分割”された存在だった。
「君が“陸”という記録なら、僕は……“リク”という削除された記憶」
記録空間の中、少年――“リク”が姿を現す。
陸と同じ顔、だが眼差しだけが違っていた。
「……お前が、俺の空白か」
「空白じゃないよ。君が捨てた“可能性”さ。
僕は戦いたくなかった。人を傷つける力なんて、いらなかったんだ……」
だが、それが許されなかった。
リクは消された。記録から削除された。
だから今、彼は“記録空間の中だけの存在”として、陸の前に立っている。
「この戦いを終わらせたい? なら、僕の力を使って。
もう……僕だけが消されるのは嫌だから」
陸は拳を握る。
「わかった。俺は……俺の物語を、自分で選ぶ」
そのとき、《オーバーライト・ゼロ》が反応する。
【記録統合条件、整いました】
【統合形式:Re:KID-System】
【記録融合開始】
記録空間に雷光が走る。
陸とリクの記録が一つになり、武器は“完全な姿”を取り戻す――




