第五十八話「戦う記憶、削除の刃」
「接触記録:確認。対象、再起動完了。記録抹消作戦、開始します」
黒い兵装の群れが一斉に展開し、陸たちに向かって鋭い光を放ってくる。
その光はただのビームではなかった。
触れたものから「存在証明=記録」を削ぎ落とす、“存在そのものを消す”異質な攻撃。
「……これは、まともに喰らえば存在が曖昧にされるな」
セラフィナが後方に飛びのきながら、手にした双剣を交差させて防ぐ。
その瞬間、剣の表面に刻まれていた文字の一部が淡く揺らぐ。
「記録干渉……! なるほど、これが《記録抹消兵》の力ってわけか」
陸は《レム》を構える。彼の右手の武器は、壊れたままの外装とは裏腹に、脈動するように“記録の光”を灯していた。
「レム。お前、何者なんだよ……?」
『ボクは君の記憶。君が捨てたもの。君が守りたいもの。』
「……勝手にわかったようなこと言ってんじゃねぇよ」
敵の一体が突っ込んでくる。光の刃が振るわれる前に、陸の一閃がそれを打ち払う。
《レム》の刃が瞬間的に変形する。まるで「失われた記録」をコピーするように、敵の技の特性を吸収し、再構成したのだ。
【対記録兵特化モード:逆転因子展開】
「俺の武器は、“失われた記録を喰う”のか……!」
その力に驚きながらも、陸はさらに踏み込む。
「なら、お前らが削除したもの――全部取り戻してやる!」
ミオが陸の背後で支援コードを入力する。
「制御領域展開。《記録の鎖》起動。敵の演算領域、20%制限!」
セラフィナが横から滑り込み、敵の背後を取って両断する。
「アンタだけじゃない。私たちも“ここにいた”って、記録させてやる!」
黒い兵装たちの数は多い。しかし、陸たちの連携は着実に敵を押し返していく。
だが、その最中――天井から新たな“巨大な影”が降りてきた。
「ッ!? あれは……」
【コード:VOID・001《削除王》】
それは、全身が記録の断片で構成された異形の存在だった。
その一歩ごとに、空間のデータすら“書き換えられ”、足場が消える。
「ここから先は、“王”の記録しか残させない。お前たちは削除されるべき“誤記”だ」
重厚な声が響く。空白の王座に、“真なる抹消者”が降臨した。




