第五十六話「アウトコードの誘い」
「“原初の記憶”? 俺がそれを持ってるって……何の冗談だよ」
戸惑う陸に対し、ミオは静かに言った。
「これは冗談なんかじゃない。“君の存在”そのものが、この世界にとって最大の矛盾なんだ」
「矛盾?」
「この世界の記録に、君は“あるはずのない存在”として登録されている。正確に言えば、君が持っている“壊れた武器”こそ、《最初の記憶兵装》……いわば、この戦いの起点だ」
セラフィナが言葉を挟んだ。
「それって……“リコレクト=ゼロ”はただの異能兵器じゃない。戦争の歴史そのもの、つまり《世界の起源》?」
ミオは頷く。
「それを暴かれるのを恐れて、運営は君の記録を改竄した。そして、見つけ次第“抹消”するよう命じている」
「冗談じゃない……勝手に改竄して、今度は消そうってか……!」
陸は悔しさを滲ませながらも、深く息を吐いた。
ミオは一枚のチップを取り出し、陸に渡した。
「この《アクセスキー》があれば、“運営の監視外”のネットワークへ接続できる。君の過去、そして武器の本当の出自を――《記録の外》で確かめられるはずだ」
陸はそのチップを見つめながら問う。
「俺に何をさせたい?」
ミオははっきりと言った。
「戦ってほしい。《記録を書き換える者》と。そして、“君自身が誰なのか”を、君の手で証明してほしい」
「……」
短い沈黙のあと、陸は言った。
「わかった。だったらまず、全部確かめてやる。俺が……俺である証拠を、この手で」
セラフィナが小さく微笑み、頷いた。
「ようやくスタートラインね。“空気”だった高校生が、世界の中枢に迫るなんて、皮肉にも程があるわ」
その瞬間、空間にざらついたノイズが走った。
《警告:運営戦術兵器が転移座標を特定――コードZに殲滅部隊、到着まで13秒》
「チッ、もう来たか……!」
ミオが即座に指を弾くと、三人の足元にゲートが展開された。
「転送する。君たちの次の行き先は、《第六層記録地帯》――“世界の中枢”だ」
白い光に包まれながら、陸は思った。
(やっと……何かが動き出す。俺の物語が)




