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第五十五話「記録と改竄」

戦闘の余韻がまだ残る戦場跡。

崩れた瓦礫の中で、陸とセラフィナは小さな仮設拠点を築いていた。


「……お前の武器、さっきのは本当に自動で?」


セラフィナが尋ねる。

彼女の瞳には、興味と警戒、そしてほんの少しの期待が混じっていた。


陸は、腕に装着された「リコレクト=ゼロ」のコアを見下ろしながら答える。


「ああ。意識してないのに、勝手に……動いた。たぶん、俺じゃなく“武器”が判断した」


「リコレクト=ゼロが?」


セラフィナは顔をしかめる。


「それってつまり、“自律型戦術記憶兵装”。この世界では既に封印されてるはずの――」


そこまで言って、彼女の瞳が細くなった。


「いや……まさか。“記録”が改竄されてる……?」


「改竄?」


陸は言葉の意味を捉えきれず、首を傾げる。


セラフィナは一つ、小さくため息をついた後、端末を取り出した。


「《運営》の管理サーバにアクセスして、コードR-0の出自を調べた。けど……“存在履歴”がない」


「それってどういう……?」


「誰かが、“君という存在”と“その武器の履歴”をこの世界の記録から消したか、塗り替えた。つまり、君の存在自体が《外部》のものと判定されてるってこと」


「はぁ……またわけわかんねぇ話に」


陸が額を押さえる。


セラフィナは言う。


「でも、これはヒントでもある。“管理者が知らないデータ”――それは、《運営外の真実》が存在するってこと」


そのとき、彼女の端末が警告音を鳴らした。


《警告:コードZエリアに未登録IDの波動確認。座標転送中……》


セラフィナの顔色が変わる。


「やばい、転移してくる……!」


光が空間を裂く。


その中から現れたのは、銀の髪と蒼い瞳を持つ少年――だが、その雰囲気は、陸とは正反対だった。


彼は静かに語り始める。


「やっと、見つけた。コードR-0……君が《ゼロ》か」


「お前は……?」


「“管理された世界”に対する抵抗組織――《記録の外側に立つアウトコード》、その調整官。僕の名はミオ」


ミオ。

それは、かつてセラフィナが言っていたもう一つの存在――「外の記憶を集める者」だった。


陸が問う。


「なぜ、俺を探してた?」


ミオの答えは静かだった。


「君の中にある“記憶の欠片”こそ、すべての改竄を解く鍵なんだよ。君は、《管理世界》が最も恐れる、“原初の記憶”を持つ者なんだから」


陸の脳裏に、また――あの夢の断片が浮かぶ。


炎に包まれた世界。

誰かの泣き声。

無数の武器が空に突き刺さる光景。


(これが……俺の“本当の記憶”だってのか?)


ミオがさらに続ける。


「このままだと君は、《運営》に“削除”される。選べ、ゼロ。自分の過去を――この世界の嘘を、暴くかどうかを」

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