第五十三話「コードR-0、覚醒」
眠れなかった。
陸はその夜、ベッドに横たわりながら天井を見つめ続けていた。
施設、擬似生活、記憶操作――そして自分の“正体”。
(俺は、なんなんだ? 本当に“俺”は存在してたのか?)
何も信じられない。けれど、信じるしかない。
武器〈リコレクト=ゼロ〉が導いているのは、紛れもない“真実”だった。
午前4時過ぎ。
アラームよりも早く、端末が震える。
【警告:コードR-0、未承認接続を検知】
【接触者:識別不明・反応パターン未知】
「……何だと?」
直後、窓の外――
黒い雷のような光が、空を裂いた。
場面は転じ、夜の校舎裏。
そこに、黒い影が降り立つ。
「……やはり“R-0”は覚醒しかけている。今のうちに回収する」
女のような声。だがその目は、人のものではなかった。
彼女が手にしたのは、鋭く曲がった双剣。
一本は白銀、一本は漆黒。対をなす“喰らい合う刃”。
「排除対象:セラフィナ=レムリア。ついでに始末しておこうか」
セラフィナの元にも、同時に通信が入る。
「——敵性反応、接近中!? 早すぎる……!」
彼女は即座に飛び出す。
ただの情報管理者としてではなく、“戦士”として。
その目には、もう迷いはなかった。
夜明け前の空。
雷光と共に戦いが始まる。
黒い双剣の使い手が、セラフィナに迫る。
“情報空間の干渉者”、つまり裏世界の管理外存在。
セラフィナが武器を構える。
それは“槍と鎖”が融合した武器。
記録と記録を繋ぎ、断絶させる特殊な武器だ。
「あなた……何者?」
「名乗るほどの者じゃない。俺たちは“運営の外側”。君らと違って、役割に縛られちゃいない」
「……なら、排除するだけ」
一瞬で槍が伸び、黒の剣と激突する。
火花が散り、戦いが空間を歪ませる。
その音が、陸を起こす。
「……誰か、戦ってる……?」
彼の手元の〈リコレクト=ゼロ〉が光る。
意識が、再び“裏側”と繋がる。
【コードR-0、緊急起動】
【強制覚醒:戦闘モード・解放フェーズ壱】
「また、かよ……!」
だがもう、驚いている暇はない。
陸は跳ね起き、窓を蹴って飛び出した。
その瞬間、夜明けの空を、ひとつの影が切り裂いた。
黒と白の武器が火花を散らす戦場に、陸が現れる。
セラフィナと敵、双方の視線が彼に向いた。
「……R-0、来たか」
「陸……!」
だが、陸は叫んだ。
「名前で呼べ! コードとか管理番号とか、俺はそんなもんじゃねぇ!」
その手に、破損していたはずの〈リコレクト=ゼロ〉が完全な姿で現れる。
形状は、かつて見たこともない“変形式武器”——
銃と剣、そして鎖と弓を内包した、複合型武装。
セラフィナが驚愕する。
「……完全形態!? まだ第一解放段階なのに……!」
敵の双剣使いが、一歩引く。
「こいつ……規格外か」
陸が言った。
「質問は後だ。とりあえず、その黒いのぶっ飛ばすぞ」




