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第五十二話「ゼロからの選ばれし者」

映像が消えたあとも、陸たちはしばらく言葉を失っていた。

空には何の痕跡も残っていない。ただ、あの言葉だけが焼き付いている。


「君は“記録から消された側”の者だ」


「意味が、分からねぇ……」

陸がぼそりと呟く。だが、心のどこかでは――それを否定できない自分がいた。


セラフィナが慎重に言葉を選ぶ。


「“記録から消された”って、どういうこと? 陸……あなた、本当にこの世界の人間?」


「俺が? 違う世界の人間ってことかよ……いや、それも変だろ。俺は普通の高校生だったんだ。少なくとも、昨日までは」


その“普通”が、本当に存在していたのか。

そう考えた瞬間、陸の脳裏に“黒い靄”のようなものが浮かぶ。

感覚だけがある――だが、形も、色も、声も曖昧な記憶。


アルカが小さく警告を発した。


「記憶の中に“改ざん”がある可能性がある。リコレクト=ゼロの反応は……封印された記憶の“鍵”として作用しているみたい」


陸の手の中、〈リコレクト=ゼロ〉が微かに光を放つ。


【新たなアクセスコードを検出】

【対象:記録ノードB13 開放可能】


「開放って……何が起きる?」


その問いに答えるように、武器が震える。


次の瞬間――

陸の視界が、強制的に“接続”された。



≪記録ノードB13≫

ノイズ混じりの映像の中、少年が一人、施設の中で眠っている。

その顔は――城戸 陸に酷似していた。


「観察対象コード:R-0(アール・ゼロ)。進行は安定、外部記憶の消去は完了」

「次回覚醒フェーズに備え、擬似生活環境へ移行処理中」


音声が重なる。


「これより、“偽りの高校生活”を与える。接触対象は制限付き。全記憶にノイズを挿入」


陸は息を呑む。


(……俺は、最初から監視されてた?)


映像が終わった瞬間、陸は膝をついた。

心臓が痛む。頭が割れそうだ。


だがそのとき、アルカが近づいた。


「大丈夫。君の中の“何か”が覚醒し始めてるだけ」

「本当の戦いはここから。君の“正体”を受け入れる準備をして」


陸は、ふらつく足で立ち上がった。

そして、口角を少しだけ上げて――いつものように皮肉気に笑った。


「なるほどな……。やっと話が“ラノベ”っぽくなってきた」

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