第五十一話「世界の嘘」
黒い靄が引いていく。
ノウウェア・コード00が断末魔のような音を残し、完全に消滅した。
辺りには静寂が戻った。
「……終わったのか?」
アルカが警戒を解きつつ、辺りを見渡す。
セラフィナもゆっくりと腰を下ろした。呼吸が荒い。
だが――陸だけは、目を細めて空を睨んでいた。
「いや、終わってない。始まったばかりだ」
彼の手の中で〈リコレクト=ゼロ〉が微かに光る。
【データ補完中……】
【“真実”の断片を記録より抽出中】
「何か来る……!」
光が収束する。
次の瞬間、陸たちの前に、一枚のホログラフのような映像が投影された。
そこに映っていたのは、かつて存在したはずの廃棄都市セクター13。
そして、武器に似た装備を持つ兵士たちと――
「嘘だろ……これ、教師の神代先生じゃねぇか?」
陸が映像の中の男を指さす。
それは、彼らの通う高校で歴史を教えていた、飄々とした教師の姿だった。
しかし、映像の中の神代は――
「対“異界兵装”、作戦コードフェイズ・オメガを実行する」
「必要なら、“第零記録群”も解放する」
冷徹な表情で命令を下していた。
「なんで、学校の教師が……あんな軍指揮官みたいな顔してんだよ……」
セラフィナが呟く。
そのとき、映像が終わり、代わりに音声のみが流れる。
「君がこれを見ているということは、〈リコレクト=ゼロ〉が選んだ証だ」
「城戸 陸。君の存在もまた、“記録から消された側”の者だ」
陸の瞳が揺れる。
「世界は、一度書き換えられている。全ての“真実”は、ある事件によって捻じ曲げられた」
「そしてその中心にいるのが――君だ」
「……は?」
唐突すぎる宣告。だが、それは事実だった。
記憶の奥底にある“違和感”。
繰り返していた日常の中で、見落としていた“欠落”。
(俺は……何かを、忘れてる?)




