第四十八話「世界の果てで始まる物語」
静寂が広がっていた。
全てが終わったかのような空気の中、城戸 陸は天を仰ぐ。雲一つない空が広がり、さっきまで戦場だった景色は、まるで幻だったかのように――静かだった。
「……終わった、んだよな?」
誰にともなく漏らした言葉に、返事はない。
だが確かに、あの“世界記録管理者”リミットは消えた。崩壊寸前だった次元の狭間も、セラフィナたちの力で修復されつつある。
「陸!」
後方から駆け寄ってきたのは、アルカとセラフィナ。
彼女たちの身体も満身創痍だったが、顔には安堵の色が浮かんでいた。
「間に合って……よかった……!」
「助かったよ。お前らが来なかったら、今ごろ世界ごとログアウトだったかもな」
陸が皮肉気に笑うと、アルカが小さく舌を出した。
「でもさ、これで……全部終わり、なんだよね?」
――その問いには、誰もすぐに答えられなかった。
その時だった。
地響きのような低い音が、空間の奥底から響いてきた。
「っ……!」
陸たちの視界が一瞬にして“反転”する。
重力の向きすら変わったかのような錯覚。空が裂け、そこから――“階段”が現れた。
「なに……あれは……?」
セラフィナが呟く。
空間に突き出すように現れた、異質の構造物。
どこか機械的でありながら、有機的でもある。まるで、記憶と記録が建てた塔のようだった。
「……あれが、“記録の果て”?」
陸が呟いた瞬間、彼の目の前にひとつのアイコンが現れる。
【記録統合ポイントに到達しました】
新たなルートが解放されます。
《コード名:オーバーアーカイブ》
――選びますか?
「まさか、まだ続きがあるのかよ……」
呆れたように笑う陸だったが、その目にはすでに“次”を見据えた光が宿っていた。
「……なら、選ぶしかねえだろ。最初からそういう話だった」
陸はゆっくりと、階段の最初の一歩に足をかけた。
――それは、新たなる戦いの序章。
まだ誰も記録したことのない、未知の“世界の果て”へと続く物語だった。




