第四十七話「記録なき未来」
「……俺の“記録”が……この世界にとっての異物だっていうのか」
崩れ落ちる“選択の門”の残骸の中、陸は静かに目を閉じていた。
その脳裏に浮かぶのは、これまでの戦い、仲間たちの言葉、失ったもの――そして、得たもの。
「俺は……ここまで来たんだぞ」
剣を握る手が、震える。
その震えは恐怖ではなく、決意に変わろうとしていた。
「お前が言った通り、俺は確かに“世界の矛盾”かもしれない。
だけどな、それでも――俺がこの世界で生きて、戦ってきた記録は、消せねえよ」
「では、お前は選ばないというのか?」
リミットの声が低く響く。
「選ぶさ。ただし、それは俺の意思で、俺のやり方でだ」
陸の剣が、閃光を帯びる。
すべての“記録”が渦を巻き、彼の身体に流れ込む。
――“書き換えられる記録”ではなく、“受け継がれる記録”として。
「リミット。お前が望んだ“記録の核”は、ここで断ち切らせてもらう」
「……愚か者が」
リミットが、己の身体を解放した。
彼女の姿が崩れ、数百、数千もの“記録兵装”が具現化する。
銃剣、斬刃、魔導書、鎖剣、重斧、ナノ槍――
あらゆる戦場の記録が、彼女を中心に展開された。
「人の記録は脆弱だ。だからこそ、制御が必要だと……なぜわからぬ」
「わかってるさ……でもな、それを全部乗り越えて、今、俺がここにいる。
それが、“俺という武器”の記録だ!」
爆発的な魔力の奔流が、陸の剣に凝縮された。
「来い、リミット……これで終わらせる!」
そして激突する。
記録と記録。意思と意思。
過去と、未来。
セラフィナが空間のゆがみを押さえ、アルカが銃撃で援護に回る。
仲間たちの記録もまた、陸の背を押す。
刹那、剣がリミットの核心を貫いた。
「――これが、選んだ未来だ!」
崩れゆくリミットの中で、最後の微笑みが浮かぶ。
「……それが、君の“記録”か……ならば……次は……その記録を……」
彼女の身体が霧のように消えた。
世界は、静寂に包まれる。




