第四十六話「選択の門」
「……これが、“選択の門”」
陸たちは、塔の最深部で現れた異形の門を前に立ち尽くしていた。
剣、銃、槍、斧、杖――無数の武器で構成されたその門は、まるでこの世界に存在するすべての“戦いの記録”が凝縮されたかのようだった。
「この門の先には、“記録の核”がある」
リミットの声が、冷たく響く。
「そこに至った者は、世界の再構成に関与できる。“記録を削除する権限”を得ることになる」
「それって……世界を書き換えられるってことか?」
アルカが眉をひそめた。
「可能だ。だが――その権限を得るには、“自身の記録”を差し出す必要がある」
「……自分の記録を?」
「つまり、自我の消失だ」
陸が息を呑んだ。
「お前は……俺に、それをやらせる気か」
「君はすでに“異物”だ。この世界に存在してはいけない記録。君が選択することで、この矛盾は修正される」
「ふざけんなよ……そんな理屈、納得できるか」
陸の剣が光を帯び、敵意を向けた。
だがリミットは、微笑すら浮かべていた。
「選ばなくていい。選べないなら――その力、私が引き継ぐまでだ」
ドン、と空間が震える。
塔全体が共振し、門の中心部が開き始める。
中から現れたのは、全身を黒い装甲に覆われた“記録の守護者”。
「来るぞッ!」
セラフィナが即座に結界を展開。
守護者の一撃を受け止めた。
「こいつ……今までの奴らとは、格が違う……!」
アルカが地を蹴るが、その弾丸は守護者の装甲に弾かれ、火花を散らす。
「なら、こっちも本気を出すしかねぇな」
陸が前に出た。
剣が、呼応するように光を放つ。
『起動――レコードブレイカー・モード』
――“記録を断つ者”――
アークブレイドが異形の姿へと変貌し、周囲の空間がひび割れる。
「この一撃で、未来を――奪い返す!」
守護者と陸の斬撃が交錯した瞬間、
塔の内部が崩壊を始めた。
「門が……門が崩れていく!」
セラフィナが叫ぶ。
「時間がない、陸ッ! 決めろ……! 行くか、戻るか!」
空間に、無数の“記録”が飛び交う。
かつて誰かが戦った、誰かが守った、誰かが敗れた――その痕跡。
それを越えた先に、陸の“選択”が待っている。




