第四十五話「クロノ・ロック」
「――記録改変領域、再展開」
空間が、時間が、世界が凍りつく。
塔の前でリミットの宣言とともに発動した異能は、敵味方の動きを鈍らせ、過去と未来を歪めるように陸たちを閉じ込めた。
「……くそっ、体が……動かない」
陸は必死に足を前に出そうとするが、重力が数倍に増したかのような圧力に、膝が折れそうになる。
「この領域では“記録されている行動”しか再現できない。未来を選び取る自由など存在しない」
リミットの瞳が赤く光った。
「君たちは既に“終わっている”。ただその記録が遅れて再生されているに過ぎないんだ」
「……ふざけんなよ……!」
蒼い光が、陸の“アークブレイド”から漏れ出す。
「そんなもんで、俺の“今”を決められてたまるかよ……!」
剣が一閃。
その刹那、空間にひびが走った。
「!? 領域が……割れた!?」
リミットが初めて、驚愕の声を上げる。
「“武器の記憶”は、ただの過去じゃない。そこには、戦った者の――“未来への願い”が刻まれてるんだよ!」
セラフィナが叫ぶ。
彼女の杖にも共鳴が走り、時間凍結の領域を部分的に切り裂いていく。
「記録は、ただ保存されるだけじゃない。“選び直せる”。それが、私たち“覚醒者”の力!」
アルカの銃が光を放ち、リミットの影を打ち抜いた。
だがリミットは表情を崩さず、指を鳴らす。
「……面白い。“未来に抗う”か。では君たちがどこまで抗えるか、確かめさせてもらおうか」
塔の門が開く。
その奥に広がっていたのは――歪んだ“記録の空間”。
断片化された世界が幾重にも折り重なり、記憶が渦を巻いている。
かつて誰かが見た夢、誰かが失った過去、消された未来。
それらが、巨大な“意思”のように脈動していた。
「これは……“世界の原型”……?」
陸は呆然とつぶやく。
だが、リミットの声がその沈黙を打ち破った。
「ここが“観測の塔”の最深部。この場所で、“真なる記録者”が目覚める」
「真なる……?」
「君だよ、陸。君の記録は、すでにこの世界の中枢とリンクしている」
「は……? 何言って……」
「君の存在そのものが、未来にとって“矛盾”なんだ。だから今ここで――“選択”してもらう」
空間が震える。
塔の最奥に、“扉”が現れた。
それは、無数の武器が交差して形作られた異形の門だった。




