表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/92

第四十四話「観測の塔」

霧が晴れゆく先に、巨大な“塔”が姿を現した。

地平線まで見渡せる荒野の中央、空を突き刺すように建っている。


「……あれが“観測の塔”か」


陸はごくりと喉を鳴らした。

一見すると旧時代の通信施設のようにも見えるが、塔の周囲には奇妙な力場が揺らぎ、空間が不自然に歪んでいる。


「この世界の“本当の記録”が保管されている場所。観測者たちの記憶が集積された最深部があるわ」


セラフィナの声は固い。


「だが、近づく者を拒絶するように構築された防衛システムも厄介だ」


フォグがそう言った瞬間、塔の足元から立ち昇る“黒い光”が辺りに広がる。


「っ、これは……!」


黒い波動が地を這い、空間にひびを入れていく。


「“記録喰らい”だ……!」


アルカが叫ぶ。


「過去の記憶を破壊する、“灰”の尖兵。あれに触れたら、存在そのものが曖昧になる……!」


陸は剣を構える。


“アークブレイド”が鈍く震え、青白い刃を形づくる。


「行くぞ。ここを抜けなきゃ、何も始まらない」


先頭に立つ陸の後を、セラフィナたちが追いかける。

塔へと続く道は、まるで時空そのものがねじれた迷宮のようになっていた。


刻一刻と崩れゆく記録の世界。


“今この瞬間”を守るために、彼らは進む。


やがて塔の扉が目前に迫った時――


「待っていたぞ、“記録の運び手”たちよ」


漆黒のコートを纏い、赤い双眸を持つ少年が立ちはだかった。


「……誰だ?」


陸が剣を向けると、少年はわずかに笑う。


「俺の名は《リミット》。この世界が“二度壊れる”ときに生まれた存在だ」


「“灰”の……一員か?」


「否。俺は“修復者”だ。お前たちのような、未完成な記録を整えるための存在。つまり、お前たちが生きていることが矛盾なんだよ」


塔の扉が、リミットの背後で静かに閉じる。


「――ここを通したくないなら、やるだけだ」


陸が剣を振るう。


だがその刹那、時間が一瞬止まったように思えた。


記録改変領域クロノ・ロック、展開」


リミットの指先が光り、世界が変質する。


「時間そのものを……操作してる!?」


フォグが叫ぶ。


「“観測の塔”の力を使っているのか……!」


「だったら、こっちは“武器の記憶”で対抗するまでだ」


陸は、震える手で剣を握りなおす。


「過去がどうだったかなんて、もうどうでもいい。ただ、今ここで誰かの“未来”を守る。……それだけだ」


剣が共鳴し、蒼く輝いた。


その光は、迷いのない意思の証だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ