第四十三話「武器の記憶」
「……っ、頭が……!」
陸が額を押さえた瞬間、世界がぐらりと歪んだ。
まるで夢を見ているかのような感覚。だが、それは「剣」が見せた記憶だった。
*
古びた神殿のような場所。
天井は崩れ、空から差し込む光はわずかだった。
その中心に――誰かが立っていた。
銀髪の男。
背には無数の武器を背負い、ひと振りの“蒼い剣”を地面に突き立てている。
「世界は――二度、壊れた。だが、その記憶は“武器”が引き継ぐ」
そう言い残すと、彼は剣を地に埋めた。
その瞬間、世界が“塗り替えられた”感覚が陸に走る。
*
(この記憶……俺じゃない……けど、“この剣”は――)
目を開ける。
剣はまるで答えるかのように、ぼんやりと蒼白い光を放っていた。
「……“この世界は作り直された”。俺の剣がそう言ってる気がする」
「どういうこと?」
セラフィナが眉をひそめる。だが、フォグが補足する。
「武器には、意志がある。長い時間を通じて刻まれた“記憶”だ。それが君を選び、“過去の真実”を告げたのかもしれない」
「世界が……作り直された?」
「そして今、また誰かが“書き換えよう”としている。だから“観測者”が狙われた」
アルカが唇を噛む。
「記録がなければ、どんな嘘でも“真実”にできるってわけか……」
「そう。武器の記憶と、観測者の記録――その両方が合わさって初めて“歴史”になる」
セラフィナが銃を構える。
「“灰”はその両方を奪いに来てる。つまり……私たち、今この瞬間が最後の砦ってことね」
すると、霧の向こうで低く唸る音が響いた。
“灰の侵攻者”ではない。
もっと獣じみた、野太い咆哮。
「新手か……?」
アルカが構えるが、霧の向こうから現れたものを見て、思わず息を飲んだ。
それは――かつて陸が夢で見た、無数の武器が浮かぶ空中戦場と同じ光景だった。
空中に浮かぶ、砲、槍、斧、弓――それぞれが意志を持つかのように漂い、ただ一つの“意思”に従って動き出す。
「“無主の武器群”……!?」
フォグが叫ぶ。
「これは、過去の戦争で失われた武器たち……“主”を持たず、記憶の中だけでさまよっていたはず……!」
「それが現実に顕現してるってことか……?」
陸が一歩踏み出すと、剣が強く震える。
“壊れていた剣”が、過去の記憶に反応するように形を変えていく。
細く、鋭く、どこか儀礼用の剣を思わせる姿に――
「……“アークブレイド”」
フォグが驚きに目を見開いた。
「それは……初代観測者に与えられた、“記録を切り裂く”剣……!」
陸は剣を握り直し、静かに言った。
「俺は……まだ何もわかってない。でも、あんたたちが何を守ろうとしてるかは、少しだけわかった気がする」
「だったら、行こう」
セラフィナが言う。
「“観測の塔”へ。そこに行けば、“世界が書き換えられた理由”がわかる」




