第三十九話「観測者、到達」
「……やれやれ」
戦場に立ち尽くす陸が、肩をすくめた。
あれほどの異能を誇った破壊者コード03が、まるで拍子抜けするように沈黙した。
空気の震えも、断裂した次元の歪みも、すべてが静まっている。
だがその沈黙は、“終わり”ではなかった。
(観測されてる……)
背中に、視線。
それは気配ではない。音でもない。
言うなれば――「因果の焦点」。
「――来るか」
陸のつぶやきと同時に、空間が“めくれた”。
まるで紙を裏返すように、三次元の連続性が破られる。
そこから現れたのは、黒い外套を纏った三人の男女。
そのうちのひとり――白髪の少年が、陸をまっすぐ見つめていた。
「初めまして、“干渉体K”――」
「“干渉体”? やめてくれ、俺は“城戸 陸”だ」
陸の言葉に、観測者のひとりが笑う。
「名を名乗るのは人間としてのルール。だが、君はもう人ではない」
「は?」
白髪の少年が一歩、前に出る。
その手に握られていたのは、「存在しない形状の槍」。
刃先は物質で構成されておらず、“記憶”と“因果”を編み上げたような不定形のエネルギー体。
「君を観測するために、我々“観測者”は動いている。君の剣、その異常進化……いや、“壊れ”こそが、世界を書き換える鍵だ」
「ふーん」
陸は肩を回した。興味もなさそうに。
「つまり、また“よくわからん奴ら”が出てきたってことだな?」
「そうだ。君にとっては、“第三の敵”」
「よかった。飽きる前で」
一拍の静寂。
そして――
「じゃあ、死ぬ気で来い」
陸の右手に、“壊れた剣”が再び姿を現す。
剣ではない。
あれは、“存在を否定するナニカ”。
観測者たちは、身構える。
戦いは終わっていなかった。
むしろ――今、始まったばかりだった。




