第三十八話「理屈を超える力」
亀裂が走った盾が、まばゆい光を放ちながら自己修復していく。
その様はまるで“巻き戻し”のようだ。
「……時間逆行型の再生か?」
陸が呟く。理屈として理解はしたが、納得はしていない。
(空間歪曲+時間修復……もう笑うしかないな)
「攻撃が通じても、“それ以前に戻る”ってわけか」
背後のユズが叫ぶ。
「じゃあ、どうすれば……!」
陸は笑った。
「“壊れる前の状態”を想定できなければ、巻き戻すことはできない――そうだろ?」
その言葉と同時に、剣が輝きを増す。
――否、剣という形状を超えて、“概念”が変質していく。
「終ノ型・レムナント――崩壊演算」
武器の周囲に、空間が“もつれ始める”。
干渉するだけで、物理法則が狂い出すその刃は、もはや“武器”ではない。
それは――“存在そのものを破壊する”異能。
「君は、“盾で防ぐ”という前提が間違ってる」
ズンッ、と空気が重くなる。
破壊者が構えた盾に、再び亀裂が走る――否、今回は“構える前”に砕けた。
(!?)
破壊者の目が見開かれる。
自らの能力が、一手遅れる前に粉砕されたことへの、純粋な“理解不能”。
「“演算崩壊”。防御不能。回避不可。自己修復不能」
陸の声は静かだった。むしろ、どこか憐れむような声音すら帯びている。
「だから言ったろ。“壊れてる”のは、剣だけじゃないって」
刹那。
音もなく、破壊者が後方へ吹き飛ばされる。
爆発は――ない。
地面がえぐれることもない。
だが、そこにはただ、“圧倒的な差”だけがあった。
「……コード03、沈黙。戦闘終了と判定します」
通信機越しに、封鎖局の声が響いた。
「――で?」
陸は小さく笑った。
「次は、どんな“理不尽”が出てくるんだ?」




