第三十七話「盾を砕く者」
「それ、あまり前に出るなよ。潰されるぞ」
陸が肩越しにユズへ声をかけた。
その声には焦りも恐れもない。ただ、空気を読んで立ち位置を調整するような、そんな自然体。
「わかってる。でも、あれ……普通じゃない」
コード03――“破壊者”と呼ばれる存在は、目の前に立っているだけで圧を放っていた。
その“盾”はただの防御手段ではない。“空間ごと押し潰す”という力を孕んでいる。
「攻撃が届かないどころか、接近した時点で潰される。近接殺しの極致だな」
陸は《終ノ型・レムナント》を手に一歩踏み出す。
次の瞬間、盾から不可視の力場が放たれた。周囲の瓦礫が一気に押し潰され、地面がえぐれる。
「――ッ!」
だが、陸はそれを“抜けた”。
「は?」
破壊者がわずかに反応する。
それは初めての“意志”の動きだった。
相手に“認識された”瞬間――
「壊れてるのは剣だけじゃないんでね」
陸は剣を振り下ろした。
ガキィィィィィン――!
超重圧の“盾”と“崩壊する剣”が激突する。
だが、あり得ないことが起きた。
――盾の表面に、亀裂が走る。
ユズが目を見開く。
「あの盾が……砕かれてる……!」
盾は異能の塊であり、空間歪曲によって“攻撃そのものを拒絶する”力を持つ。
それが、“剣の破片”によって破られた。
「……お前、何だ?」
破壊者の口元がかすかに動いた。初めて言葉が紡がれる。
陸は涼しげに笑う。
「城戸 陸。無職、無趣味、無責任。ただの高校生だ」
再びぶつかる盾と剣。
破壊と崩壊のぶつかり合い。
勝つのは、“守る力”か。“壊す意思”か。
だが――
「陸、やばい! その盾、自己修復してる!」
ユズの叫びが届いた瞬間、盾のヒビが光とともに消えていく。
(厄介だな……こっちは“壊れたまま”なのに)
だが陸は、口の端をわずかに持ち上げた。
「……なら、修復なんてできないほど“粉々”にすればいいだけだ」
“壊れた剣”が、狂ったように輝きを放つ。




