第三十四話「“雷弾の銃”の記憶」
放課後、薄暗い空の下。
廃ビルの屋上に腰かけたメイが、無言で空を見上げていた。
彼女の手元には、《ラギア=ブラスト》。
蒼く輝くその銃は、今はただ静かに沈黙している。
「……懐かしいな、ここ」
ユナが隣に座る。
その表情には、わずかに沈んだ色があった。
「ここが“最初”だったのね、メイ」
「そう。私が“選ばれた”のは、二年前のこの場所。
あの時は、ただのストリートチルドレンだった。誰にも期待されず、ただ…毎日をやり過ごしてた」
「でも出会った。“あの銃”に」
メイは右手を銃に添え、苦笑した。
「最初は……拒絶されたわ。銃口が私に向いた。『資格がない』って。
でも、私は叫んだ。“私は、何かを変えたい”って――バカみたいに泣きながら」
「それが、“契約”の始まりだったのね」
「うん」
風が吹き抜ける。
その風に乗って、メイの記憶の断片が蘇る。
――小さな妹を守れなかった日。
――誰にも信じてもらえず、泣いていた夜。
「だから誓ったの。“無力”でいたくないって。
誰かを守れるくらい、強くなってやるってさ」
沈黙。
やがて、ユナがぽつりと言う。
「陸くん、どう思う?」
「……あいつ? ぶっちゃけムカつくよ。やる気ないのに力を得て、それでも本気で戦おうとしてる。
でもね……羨ましくもある」
メイは立ち上がる。
「だから、手を貸すよ。ユナ。あんたが“集める”って言うなら、私もその中に入る」
「ありがとう」
二人の少女の前に、風が渦を巻いた。
遠くで雷が鳴り、物語が新たな段階へと進み始める。




