第二十九話「因果を断ち、決意を刻む」
「ぐッ……な、なんだ今の……!」
クロムの巨体が、重力ごと弾かれたように吹き飛んだ。
その手にあったはずの鉄槌は、空中で“崩れ”、粉塵となって消える。
「……まさか、俺が武器を破壊されるとはな……!」
地面に膝をついたクロムが、目を見開いたまま言った。
一方、陸は呼吸を荒げ、黒葬剣を手にしたまま立っていた。
「はぁ……はぁ……スキル、ってのは……こんなもんかよ」
《スキル:因果崩し(ディスロウ・フェイト)》
《発動結果:対象武器に蓄積された勝率連鎖を分断・無効化完了》
《使用制限:再起動まで15分》
黒葬剣が淡々と告げる。
「勝率、連鎖……?」
「お前の剣は、“因果”を視て、断つ。
つまり、"未来に起きる勝利の可能性"そのものを消し飛ばしたのだ」
クロムは立ち上がりながら、乾いた笑みを漏らす。
「……ようやくわかった。お前は、確かに“継承者”だ」
「だからって、手加減してくれるのか?」
「いいや。むしろ――全力でお前を試す」
クロムの背中に、新たな紋章が浮かび上がる。
空中に、もう一つの“鉄槌”が構成されていく。
《クロム:第二武装形態〈重力制圧槌:グラヴィ=セカンド〉展開》
《圧縮領域・発動》
「ま、まだやんのかよ……!」
陸が構え直すと同時に、地面が浮き始める。
周囲の重力が、異常なまでに歪み始めた。
(マズい……さっきのスキルも使えない。今度は真正面から受けるしかないのか)
だがその時――
「……下がって、陸」
割って入るように、ひとりの少女が現れた。
「君が“壊れた武器”を目覚めさせたと聞いて、探してた」
黒髪に銀の眼。
その背には、まるで“羽根”のように光る刃が八枚、浮遊していた。
「私は“調律者”――この世界の秩序を保つ者」
クロムの目が細まる。
「……お前は、“異端”側の監視者か」
少女は陸に目を向ける。
「ここは私に任せて。あなたは、まだ“本当の戦い”の入り口に立ったばかり」
陸は呆然としながら、剣を握りしめたまま頷いた。




