第一話「目覚めと監視者」
暗闇の中、俺は目を覚ました。
目蓋の裏で赤い残光がちらついている。昨日――いや、ついさっき起きた異常な出来事。
壊れた刀、光る刃、異様な感覚。そして、消えたスーツの男。
夢であってほしい。だが、あれが現実だと証明する“違和感”が、今も体中に残っていた。
「……ここは、どこだ?」
目を開けると、そこは見知らぬ部屋だった。
無機質なコンクリートの壁。鉄格子の窓。安物のベッドと、剥き出しの蛍光灯。
医務室のようでもあり、牢屋のようでもある。
「気がついたか」
不意に、低い声が響く。
声の方を向くと、部屋の隅に黒いジャケットを着た男が椅子に座っていた。
無造作な銀髪。片耳にピアス。鋭い目つき。
年齢は……20代後半くらいか?
「お前……誰だよ」
「名乗るほどでもないがな。俺は《観測者》だ。お前の"適合"を見届ける役目だ」
「……なにそれ、どこの厨二設定だよ」
「お前、昨日“刻断者”を拾ったな」
その瞬間、俺の背筋が凍った。
「その反応。やっぱり記憶はあるようだな。よし、話は早い」
男は無言で、テーブルの上から“例の刀”を取り上げた。
そう、あの壊れていたはずの刀――今は、奇妙に再構成され、禍々しいほどに美しく仕上がっていた。
「これが“武器”。正確には“コード兵装”だ」
「コード兵装……?」
「それは“選ばれた者”にしか扱えない。契約が成立した時点で、貴様はこの世界の裏側に足を踏み入れたことになる」
「……裏側?」
「そうだ。俺たちは《表》の社会には存在しない。《裏》の秩序で動いている。政府も警察も関与しない、“武器を媒介にした異能力戦争”だ」
そう言って、男は懐から一枚のカードを取り出して投げてきた。
受け取ってみると、そこには俺の顔写真とともにこう書かれていた:
■コードネーム:ルイン(仮)
■適合武器:刻断者
■クラス:C-
■所属:未登録
■監視対象ランク:高危険度未分類
「お前は今、未登録武器使いだ。放っておけば“敵勢力”に狙われる。つまり――命は、もう狙われ始めてるってことだ」
「……いやいや待て待て、俺はただ拾っただけで……」
「拾った? 違うな。選ばれたんだよ」
男は立ち上がり、鋭い視線で俺を見据える。
「歓迎するぜ、ルイン。世界の“戦場”へ」




