第二十三話「記録の内側、《管理者の記憶》」
光に包まれた空間を、陸の足が踏みしめる。
そこは現実ではなかった――けれど、確かに“誰かの記録”だった。
白銀の空、崩れた都市、そして燃える空気。
足元に転がるのは、かつての兵士たちが握っていた“未完成の武器”。
「ここは……」
《ここは、武器が“人間に選ばれた”最初の戦争──その終焉地点だ》
ディバイダーが語る。
その声は以前よりも明瞭で、まるで“意志”を持っているようだった。
「お前、喋れたのかよ……」
《喋っていた。お前がようやく“聞こうとした”だけだ》
ディバイダー。
正式名称《刻断者》。
それは、管理者によって創られた第一世代の“観測兵装”だった。
「武器は、人の心を測定するための器だ」
かつて、“管理者”と呼ばれた科学者はそう言った。
「戦争は終わらない。ならば選別しよう。
心の強さを。正しさを。力を」
そして始まった、“選ばれし者による戦争”。
しかし、その思想はやがて暴走し、“異能”は人間の存在を上書きし始める。
《俺たちは止めようとした。だが、間に合わなかった》
崩れた都市の奥に、巨大な塔が見える。
「そこに……答えがあるのか?」
《塔は《記録》の中枢。
過去と未来、すべての記録が保存された場所。
俺はそこで、君を待っていた》
陸はゆっくりと、歩き始める。
足元の砂が過去を刻み、空間のひずみが未来を揺らす。
そして――塔の影から、誰かが姿を現した。
「お前は……!」
それは、学校で何度もすれ違った“あの男”だった。
「よう、城戸陸。やっと来たか。
……壊れた武器の《後継者》」
彼の右手に握られていたのは、ディバイダーと酷似した“もう一つの刃”だった。




