第二十話「折れた刃の名は《記録》」
目覚めたとき、陸の手の中にあったのは、かつて“壊れていた”はずの武器だった。
けれど今、そこにあるのは――
「……あまりに、綺麗すぎる」
まるで、最初から壊れてなどいなかったかのように、刃は完璧だった。
光を孕んだ漆黒の刀身、鍔に刻まれた古いルーン文字、そして柄の奥にかすかに脈打つ“何か”の気配。
《よく思い出したな。お前が持っていたものの“正体”を》
耳元で声がした。
この声――壊れた武器が語りかけてきた時の、それと同じ。
「お前……やっぱり、意識があったのか」
《俺は“記録”。失われた過去の断片。お前が触れたことで、もう一度存在することができた》
《だが、これは始まりにすぎない。この世界には“書き換えられた記録”が溢れている》
陸は何かに気づくように、視線を上げた。
そしてそこにいたのは――
「……お前かよ。どうしてここに……」
現れたのは、《VANT》。
黒い外套に身を包み、顔の半分をマスクで隠したその男は、かつて陸に言った。
「“壊れた武器”を持つ者こそが、過去を知る資格を持つ」と。
「その目覚めが、お前でなければよかったのにな」
「……あんた、何をやろうとしてるんだ。世界の記録を改竄してまで、何が欲しい」
「お前にはまだ見えていない。《この世界の“真の管理者”》が誰なのかをな」
その言葉と同時に、空間が歪んだ。
壁が崩れ、異形の武装兵が現れる。
人間の形をしているが、瞳に光はない。まるで機械のように、ただ命令だけで動いている存在。
「こいつらは……兵器か?」
「《記録を管理する者》が作った、かつての“兵士”。感情も意志も持たず、ただ命令に従う。
だがな、陸――お前はどうだ。お前の武器には“意志”がある。選んだのは武器ではなく、お前自身だ」
陸は刀を構えた。
“選ばれた”のではない。“選んだ”のは自分。
「なら――俺が書き換える。お前らが塗り潰した過去も、記録も、全部俺が取り戻す!」
異形の兵士が突撃してくる。
陸は刃を前に踏み出した。
《よくぞ言った。ならば、記せ――お前自身の“戦いの記録”を》
斬撃。光。疾走。
無数の影が散っていく。
そして、再び相まみえる、《VANT》との一騎打ちへ。




