第十九話「再記録《彼岸ノ断章》」
――静寂。
何もない白の空間に、陸は一人、立ち尽くしていた。
先ほどまでの地下施設の喧騒も、影との交戦も、すべてが遠い夢のように思える。
「ここは……どこだ?」
問いに応じるように、白い空間がゆらぎ始めた。
一冊の古びた本が浮かび上がり、ページが勝手に捲られていく。
やがて表示されたのは、一枚の映像。
そこには、かつて“記録者”と呼ばれた人々が、次々に倒れていく姿が記録されていた。
「これは……」
彼らを殺していたのは、“武器”を持った別の記録者たち。
同胞による粛清。だが、その背後には見覚えのある姿があった。
《VANT》。
かつて“記録者”の一人だった男が、組織を裏切り、自らの理想のために仲間を滅ぼした記録。
そして、その中心にいたのはもう一人。
《レヴ》。
黒髪の少年。――陸と瓜二つの顔。
「……は?」
空気が凍った。
陸は信じられないという表情で、映像を見つめる。
《レヴ》は、“壊れた武器”を持っていた。
だが、陸が持つそれとは異なり、完全な形を保っている。むしろ、“壊す前の姿”のようにすら見えた。
《記録は繰り返す》
《記録は歪む》
《記録は、意志によって書き換えられる》
またページがめくられ、陸の足元に文字が浮かび上がった。
『城戸 陸――選ばれし“再記録者”。この世界の破損記録を修復し、“武器”の真の形を思い出せ』
その瞬間、陸の手にあった“壊れた武器”が、赤い光に包まれる。
砕けた刀身が再構築され、まるで過去の記憶を取り戻すかのように、鋭く美しい一振りへと変貌していく。
「これが……俺の“本当の武器”?」
――記録が終わると同時に、世界は再び闇へと沈んだ。




