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第十八話「影の記録者《VANT》」

警報が鳴り響く中、地下施設の照明が明滅する。

緊急シールドが展開され、出入口がすべて封鎖されていく。


「……おかしい」

志乃が即座に察知した。「この侵入者、対応が早すぎる。事前に情報を掴んでた……?」


礼士が顔を曇らせた。


「“記録者狩り”だ。俺たちの行動は、どこかで漏れていた。

……おそらく、内部に“裏切り者”がいる」


その言葉と同時に、闇の中から影がうねる。


「ずいぶんと成長したな、陸。……いや、“記録者《風》”と呼ぶべきか?」


姿を現したのは、黒いフードに身を包んだ青年。

全身が黒い霧のような“影”に覆われており、その足音すら存在しない。


志乃が息を呑む。


「……あなたは……《VANT》……!?」


礼士の表情が凍りつく。


「……まさか、あんたがまだ生きていたとはな」


VANTヴァント》――かつて“記録者”の一員でありながら、禁を破り、異能を強化しすぎて影に堕ちた存在。

現在は《NOIR》の尖兵として、過去の仲間たちを粛清して回っている。


「“記録”に未来はない。俺は、あの日それを悟った。

ならば“消す”ことで、すべてを最初から書き直す」


《VANT》が影を伸ばし、三人を包囲する。

その“影”は、触れるだけで肉体を腐食させる特性を持つ。


「くそっ……志乃、後退! 礼士は《コード》を守れ!」

陸は“壊れた武器”を構え、前へ出る。


折れた刀身の先が、わずかに赤黒く煌めいた――


刃閃《風纏・斬翔ふうてん・ざんしょう

一陣の風が地下を駆け抜ける。

陸の踏み込みは、影すら斬り裂く加速力だった。


「遅い」

《VANT》が冷たく告げる。


その刹那、陸の背後から影が地面を這い、斬撃の先を奪い取るようにまとわりつく。


「くっ……!」


刃が鈍る。だが――


「“壊れた武器”ってのはな……壊れたままでも、貫くから意味があるんだろ」


再び陸が踏み込む。

その手には、今やただの“破片”となった副刀――それさえも武器と化す。


「舐めるな、“元記録者”!」


激突する二つの異能。

風と影が地下資料室を引き裂き、空間が歪む。


しかしその時――


《システム警告:レヴナント・コード、保護封印異常。再起動プロトコル開始》

《コード解放条件、達成。次段階“記録の解凍”へ――》


本が光を放ち、地面が裂ける。

次の瞬間、全員の意識は再び“記録の中”へと引きずり込まれる。

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