第十六話「記録者狩り」
その日から、“記録者”を狙った襲撃が相次いで発生した。
最初の報せは、東京・多摩エリア。
中学3年の“記録者”が、自宅ごと消滅したという。
次に、千葉、埼玉、横浜――
どの事件にも共通するのは、現場に“記録”の痕跡が何一つ残っていないという点だった。
「……つまり、“記録者”だったという証拠すら消されてるってことか」
陸は、生徒会室の端末で解析される監視映像を睨みつけていた。
隣で志乃が唇を噛む。
「しかも犯人は、“記録狩り”って名前でネットでも話題になり始めてる……
これ、完全に隠蔽する気ないよね。むしろ“炙り出してる”」
陸は無言で頷いた。
《KAZE》《HAZE》として名を刻まれた時点で、すでに二人は“標的”でもあった。
自分たちが強くなればなるほど、逆にそれを“消そうとする側”の目にも留まる。
「……『記録狩り』の背後にいるのは、誰なんだろう」
志乃の問いに答えたのは、ドアをノックもせずに入ってきた人物だった。
「“NOIR”だよ。過去に一度、異能者を消し去ろうとした組織――」
現れたのは、白衣を着た中年の男。
髪は乱れていたが、その目は鋭く知性を帯びていた。
「初めまして。俺は《知識保持者》の天倉 礼士。
君たちには、“世界の再構築”について話さなければならない」
時を遡る――20年前
異能力戦争が一度、終結した。
多くの“武器と記録者”が消え、世界はそれを“なかったこと”として処理した。
だが、それでも消えなかった“何か”があった。
“世界の欠損”だ。
「NOIRはね、あらゆる“記録”を排除することで、“完璧な現実”を作ろうとしてる。
そのために、“記録者”を狩ってるんだ」
「つまり、俺たちは“理想の現実”にとっては邪魔な存在ってわけか」
陸が乾いた笑いを漏らすと、礼士は重く頷いた。
「君たちはこの世界の“裏側の構造”に足を踏み入れた。
それは……記録と武器による“秩序”と“淘汰”の戦いだ」
志乃が手にした《霞風扇》が、静かに風を生む。
「なら私たちは……消される前に、真実を暴かないとね」
「そうだ。それが――君たち“記録者”の使命だ」




