第十四話「裏世界の記録者(アーカイブ)」
模造体との激闘が終わった直後、教室の中央に残された“かけら”が微かに発光を始めた。
「……これ、まだ何か動いてる……?」
志乃がおそるおそる指先を近づけると、それはふっと空中に浮かび、無数の光子となって拡散した。
瞬間、周囲の空間が黒く染まり――
≪記録再生開始。コード:EDEN-13≫
無機質な女声が響いたかと思うと、周囲の風景が、まるで水の中で揺らめくように変わっていく。
「これは……映像? 記憶か……?」
陸と志乃の目の前に広がったのは、廃墟となった都市。
空は濁り、ビルは朽ち、地面には無数の“壊れた武器”が突き刺さっている。
その中を歩いていたのは――一人の少女。
白髪、黒衣、片目を包帯で覆ったその姿は、明らかに人間ではなかった。
≪彼女の名前は、《アーカイブ》。世界に散った武器の記録者≫
「記録者……?」
志乃が眉をひそめる。
≪武器は“人”の意志を宿し、やがて感情を持つ。
しかし、それは“異能”のはじまりでもあり、“破滅”の種でもある≫
≪この世界には二つのルールがある。
一つ――武器は魂を喰う。
二つ――武器は記録されなければ、いずれ存在そのものが消える≫
≪我が名は《アーカイブ》――滅びの記録者。君たちの前任者を、私は見てきた≫
陸がピクリと反応した。
「前任者……?」
≪コードネーム:NOIR――かつて“刻断者”を扱い、模造体を駆逐した少年。
君と“同じ武器”を持っていた≫
「――ッ!?」
陸の視界が揺れる。自分の持つ“刻断者”は、完全にオリジナルだと思っていた。
「じゃあ、俺の“前”にも、同じ武器を……?」
≪NOIRは、すべての模造体の核心にたどり着いた。
だが彼は最後、“記録されることなく”消滅した。
そのため、世界からは存在ごと“忘れられた”≫
志乃の手が震える。
(そんな……忘れられる? 存在ごと?)
≪次に問う。君たちは、記録者としてこの戦争に関わる覚悟があるか?
それとも、記録されずに消えるか?≫
静寂が満ちる。
陸はゆっくりと口を開いた。
「……俺はもう、巻き込まれてる。
ならせめて、“残す”側になってやる」
志乃も、それに続くように頷く。
「私も。――この空虚を、無駄にしたくないから」
≪了解。記録登録開始。
コードネーム:KAZE/HAZE≫
その瞬間、二人の視界に、“紋章”のような紋様が刻まれる。
“彼らの物語”が、ようやく記録され始めた。




