第十三話「空虚を喰らう者、そして模造体」
模造体――。
人間と同じ形を持ちながら、感情も知性も持たない“破壊のための模倣”。
そして何より危険なのは、その核が「失われた武器」そのものであること。
ガギャアアァアァッ!!
断末魔のような咆哮をあげて、異形のそれが教室を突き破って飛び込んできた。
「志乃、構えろッ!」
陸の叫びと同時に、“刻断者”が黒き斬撃を纏って展開される。
陸の一撃が模造体の左腕を吹き飛ばした――が、すぐに再生する。
「……再生特化型か、だるいな」
志乃も左腕の“エンプティ・リンク”を起動させ、金属の羽根のようなエネルギーブレードを放つ。
切断された空間が、静かに歪む。
(これは……感覚が空になる?)
彼女の“能力”は、空白を刃に変えるタイプ――「空無連鎖」。
戦いながら、志乃は己の中に眠っていた何かが、少しずつ呼び覚まされていくのを感じていた。
それは恐怖ではなかった。
むしろ、安心に近い感覚だった。
(私は……この武器に、助けられてる……?)
模造体の動きが急激に速くなる。
目も口もないはずのそれが、明確に陸を“狙っている”ことが、二人には伝わった。
「志乃! こいつ……俺じゃなく“刻断者”が目的だ!」
「つまり、あなたの武器を……!」
「ああ、こいつは武器を喰う。未登録武器、特に壊れかけのやつを!」
その言葉と同時に、模造体の体表が変形し、嘴のようなパーツが形成された。
それは捕食器官――武器喰いの証。
陸は跳躍し、斬撃を放つが、模造体はそれを“学習”したかのように回避した。
(やばい、こいつ……喰らうごとに学んでやがる!)
すかさず志乃が側面から飛び込む。彼女の刃が模造体の背中を削ったが、反撃はなかった。
(私には反応が薄い……まだ私の“武器”は完成してないからか)
陸が模造体の注意を引きつけ、志乃がその隙を突く――
その連携が、徐々に戦況を優位に運びつつあった。
しかし。
模造体の腹部から、別の口のような裂け目が開き、黒い光を放つ“何か”が姿を現した。
それは武器だった。だが、明らかに異質。
「……あれは、“失われた武器”の……!」
陸は言葉を失う。
模造体は、それを発射しようとしていた。暴走したまま、無差別に。
時間はない。
「志乃、全力でいくぞ!」
「うんッ!」
二人は、ほぼ同時に武器を起動させた。
一閃、斬撃と空白の刃が交差する――
そして、模造体の核を、真っ向から貫いた。
爆発音すら生まれなかった。ただ空気が抜けるように、模造体は霧散していった。
残されたのは、欠けた“武器のかけら”だけ。
「……倒した、の?」
「いや。あれはまだ“試作型”だ」
陸の目が細められる。
「本命は、もっと化け物だ」




