第十二話「“眠る武器”が選んだもの」
《封鎖警告:裏世界反応、校区D-13にて発生。すべての武器適合者は即時出動せよ》
機械音声の警報が鳴り響いた瞬間、窓の外の空気が変わった。
街並みがほんの一瞬、ノイズのように歪む。
日常と非日常の境界が、強制的に書き換えられていく。
「……来たか」
陸は短くつぶやくと、制服のポケットから《刻断者》を取り出し、起動の意志を込めた。
──起動コード:断裂認証、完了。
──武器人格:接続済み。
──戦闘形態・零式:展開可能。
黒鉄のような霧が立ち上り、手の中で“壊れた刃”が姿を変えていく。
その姿に、志乃は声を失っていた。
「……それが、“本物の武器”……」
「お前は来なくていい。ここは俺が――」
「待って!」
志乃が陸の手をつかんだ。震える声、だがその目は真剣だった。
「私にも……私にも戦わせて。あの武器、また反応してた。
今なら、もしかしたら……!」
陸が視線をやると、志乃の机の上の腕輪が再び微かに脈動していた。
まるで――主を選び直そうとしているように。
「バカか。お前、選ばれなかったんだろ。向いてないって――」
「それでも! わかってる。これは無理だって。
でも、あの日からずっと……心の中にこの“枷”があったままなんだ。
戦えなかった自分を、ただの失敗作だって決めつけたままの……自分が許せないの!」
沈黙。
陸はため息をつきながら、わずかに肩をすくめる。
「じゃあ、やってみろよ。動かせるなら、証明してみろ」
志乃はうなずき、そっと腕輪を手に取った。
震える手を押さえながら、それを自分の左手に――装着する。
その瞬間。
バチンッ!
火花のような閃光が教室に弾け、志乃の体が弾き飛ばされる。
「志乃ッ!」
だが、次の瞬間――
腕輪が、まるで羽のような金属片を展開し、空中で少女の身体を支えた。
《適合率:47.8%……条件、臨界突破。副武器モード、強制再起動》
志乃の左腕に黒鉄の機械的な装甲が展開し、脈動しながら「何か」が目覚めていく。
《武器名:エンプティ・リンク(空無連鎖) 起動》
志乃の瞳が、紫の光に染まった。
「……選ばれた……?」
陸は口を半開きにして呟いた。
だがその直後、窓の外――異界の亀裂から、漆黒の影が現れた。
それは人の形をしていたが、人ではない。
眼がなく、口もなく、ただ腕だけが異様に長く肥大化している。
「……あれは“模造体”――!」
陸と志乃は同時に動いた。
一人は“壊れた刃”を、もう一人は“かつて拒んだ腕輪”を武器にして。
不協和音のように始まった二つの戦いが、いま、重なる。




