表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/92

プロローグ:壊れた武器が呼ぶ声(前編)

朝のホームルームが終わっても、誰も俺の席には気づかない。

いや、たぶん気づいてるけど、気にされてないだけだ。

まあ、どうでもいい。


城戸 陸――高校二年。空気、って言葉が似合いすぎる男。

目立たないようにしてるわけじゃないけど、目立とうとも思わない。

何やっても面倒ごとにしか繋がらないって、十数年生きてれば普通に気づく。


だから俺は、極力目立たず、波風立てず、平凡な日々を淡々と過ごしてる。

そういうやつって、ラノベとかアニメだと「実は最強」ってパターンが多いけど……。


俺にはそんな裏設定、ない。


――はずだった。


その日、帰り道で俺は“それ”を拾った。


夕暮れの商店街。人通りの少ない路地裏。

いつものように、コンビニで安い菓子パンを買って、帰ろうとしてただけ。


視界の端に、何かが“落ちていた”。


最初はただのゴミかと思った。

けど、なぜか目が離せなかった。

まるで、呼ばれているような感覚。


「……なんだこれ」


それは――刃が半分ほど欠けた日本刀のようなものだった。

柄の部分は煤けていて、鞘もなく、見るからに“壊れている”。


だが、触れた瞬間――

頭の中に、誰かの“声”が響いた。


『――ようやく見つけた、か。』


一瞬、手を離そうとした。でも体が動かない。

というより、何かに“掴まれている”ような感覚だった。


『選ばれし者よ。お前に問いかける。力を求めるか、否か。』


「……は?」


俺は、ただの高校生なんだが。

異能とか、選ばれし者とか、厨二病かよ。


そう思いながらも、なぜかその言葉を、否定できなかった。

いや、正確には――“その言葉を聞いた瞬間、世界が変わった”。


「おい、そこのガキ」


突然、背後から声がした。


振り向くと、スーツ姿の男が立っていた。

片手には拳銃、もう片手には“黒い金属の短剣”。


――直感で分かった。


この男は、さっきの“声”と同じ世界の住人だ。


「悪いが、それはお前のモンじゃねえ。“武器”は資格のある者だけが持つべきだ」


武器? 資格? 何を言って――


パァン。


乾いた銃声が響いた。


とっさに体を捻った。弾は俺の肩をかすめ、背後の壁に穴を穿つ。

痛みと恐怖。現実感が薄れる。血の臭い。耳鳴り。


だけど――


「……ああ、うるせえな」


脳の奥が焼けるように熱くなり、俺の手の中で“壊れた刀”が、音を立てて震えた。


『――力が欲しいなら、応えろ。叫べ。名を。』


その刹那、俺の口から、勝手に言葉が溢れた。


「……“キリエル”。」


刀身が、赤く光を帯びる。欠けていた刃が、音を立てて再生していく。


『契約、完了――“刻断者ディバイダー”起動』


目の前の世界が、色を変えた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ