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クルー紹介と嵐の気配

ほぼクルー紹介、最後に三話目の導入が入ってます

※ここからは、ちょっとした小休止。

物語の舞台は海の上、でも今はちょっとだけ視線を船内に。

金の匂いに敏感すぎる社長と、その周囲を固める個性豊かなクルーたち。

そう、ここで改めて“誰がこの船を支えてるのか”を整理しておきましょう。

作者的にも、読者的にも、そしてたぶんレイラ的にも──。

出航から数時間後。

陽も傾き、船の上では束の間のくつろぎの時間が流れていた。


「さて、社長。いい機会だし、改めて乗組員の紹介でもしてみては?」


リリィが紅茶を片手に微笑む。


「……おっと、ついに来ましたこの瞬間!」


レイラは椅子から跳ねるように立ち上がり、カメラのない方向にドヤ顔でウィンクする。


「読者の皆さ〜ん! お待たせしました! ここからは、この商会を支えるクセの強いメンバーたちをご紹介っ☆」


「急に読者意識しすぎでしょ……」


リリィが紅茶をすする手を止めないまま、少しだけ目を細めた。


「ふふん、じゃあ、私から紹介しちゃおっかな〜〜!」「名付けて! “リーフライン商会・金の匂いがする仲間たち紹介タイム”!」


「ネーミングセンスはともかく、進めなさい。」


こうして、ひと癖もふた癖もある仲間たちの、航海前の雑談と自己紹介が始まるのだった。


「じゃあまずはもちろん、この私!」


レイラが両手を広げてポーズを取ると、どこからともなく風が吹いた(気がした)。


「“永遠の17歳”、宝と金と冒険が大好きな社長、深鐘みがねレイラとは、私のことっ☆」


「はいはい、レイラ社長。肩書き盛りすぎ。」


パメラが遠くから書類片手にツッコミを入れる。


「ええー!? でも私、実際に“宝石を抱いて生まれてきた”ってウワサされるほどの幸運体質なんだけどなぁ〜」


「自分で言うあたり、怪しさ増し増しね……」


「そんなことないよ!? たしかに借金あるし、返済滞ってるし、いつもリリィちゃんに怒られてるけどっ! でもっ! ちゃんと! 社長業やってます!!!」


「大声で言うほど誇らしいものじゃないからね……」


そんな調子で、本人はいたってマイペース。だけどどこか憎めない。

彼女こそが《ラ・ミスティーク》の船主であり、リーフライン商会の看板娘(兼・社長)なのである。


「さて、お次は我らが舵取り! 無口な頼れる狼男、ガルド〜〜!」


操舵室の方から、聞こえるか聞こえないかの声で「……呼ぶな」と返ってきた。


「ガルドはね〜、元・王国軍の部隊長で、今はうちの操舵手! まじめで厳しいけど、部下思いのめっちゃいい人なの!」


「任務は完遂する。それだけだ」


鋭い目つきと灰色の毛並み、筋骨隆々の体格に無駄のない動き。

軍人時代の名残を感じさせるその姿は、まさに“頼れる男”そのものだった。


「ちなみに魚が苦手って噂、ほんと?」


「……問題はない。あれは食料ではないだけだ」


「完全に苦手じゃん!」


笑いが起きる中、ガルドはちらりとだけ目を細め、少しだけ口元を緩めた。


「続いては戦闘総指揮、我らが頼れるドワーフ! トール!!」


「おお、ついに俺の番か!」


声とともに現れたのは、がっしりとした体躯の中年ドワーフ。長く編んだ髭をなびかせながら、樽のような腕を組んで笑う。


「見ての通り、豪快で頼れる兄貴分! 元は『黒鉄の誓剣団』って傭兵団の団長だったんだよ!」


「おうとも! 戦の数なら誰にも負けん。作戦立案から突撃の先頭まで、ぜ〜んぶまとめて俺の仕事だったからな!」


「最近はパメラとの賭け事で連敗中だけど……」


「そ、それは運が悪いだけだってばよ……!」


「ちなみに、武器庫でこっそり筋トレしてるの、ちゃんとバレてるからね〜」


「努力を笑うなっ! 肉体は誠実さの証だぞ!」


頼れる兄貴肌で、商会の戦闘面を一手に担う存在。

その場にいるだけで安心感が広がる、リーフライン商会の“盾と剣”のような存在である。


「はいは〜い、次は重たくて優しい力持ち! 倉庫番のリオ・カーゴ!」


レイラの声に応えるように、船尾の方からズン、ズン……と重たい足音が響いてくる。


「倉庫整理、火薬保管、荷下ろし、全部まとめてリオの仕事!」


「ふむ。リオ・カーゴ、荷役および倉庫管理担当だ」


姿を現したのは、青黒い肌に分厚い腕、巨体を揺らしながらも慎重な足取りで歩く巨人族の男。


「彼ね、めちゃくちゃ几帳面なんだよ〜? 在庫の配置ひとつずれると、夜中に直してたりするの」


「秩序は効率を生み、効率は安全に通じる」


「そうそう! しかもね、ぬいぐるみ好きっていうギャップが最高!」


「それは業務に関係ない個人情報だ」


力持ちで無口だが、芯はとても優しく真面目。

商会の物流を一手に担う、縁の下の力持ちである。


「そして交渉の切り札、リーフラインの口八丁代表! カシム〜〜!」


「おっと、それじゃ自己紹介させてもらいましょうか」


ソファに優雅に腰かけた男が、グラスをくるりと回しながら立ち上がる。


「名はカシム。交渉と心理戦が専門、つまり……“言葉で勝つ男”ってところかな?」


「詐欺じゃなくて交渉って呼んでほしいらしいよ」


「ええ、線引きは大事だからね。あとで揉めると厄介だし」


ハーフエルフの彼は、鋭い目と洒落た身なり、そして軽妙な話術で相手を丸め込むのが得意。

これまで数々の交易を有利に進めてきた、商会に欠かせない頭脳派である。


「でも、パメラとの賭け事では連敗中なんだよね?」


「……統計的にそろそろ勝つはずなんだが……なぜか勝てない」


「パメラ強すぎ問題〜」


カシムは小さく肩をすくめながら、グラスの中身を一気に飲み干した。


「次は、料理長にして筋肉の化身! ボルド!」


「おう、腹減ってる奴は手ぇ挙げな!」


豪快な声とともに現れたのは、分厚い前掛けと巨大なフライパンを装備したオークの男。


「料理と筋トレが命! 栄養バランスも完璧、見た目も味もガチなやつ作ってくれるの!」


「食わなきゃ動けねぇ。動かなきゃ勝てねぇ。だから、俺の料理は全部“戦闘食”だ!」


「……なのに、ミネットちゃんにはよく“おかわり”ねだられてるって聞いたけど?」


「アイツは特別メニューだ。甘口対応ってやつだな」


ボルドは見た目こそ猛々しいが、面倒見のいい兄貴分。

厨房と筋トレ場を行き来しながら、今日も商会員たちの胃袋と健康を支えている。


「──って、ボルド〜〜! おなかすいた〜〜〜!」


そんな声とともに飛び出してきたのは、猫耳をぴょこぴょこと揺らしながら駆けてきた金髪の少女、ミネット。


「ミネットはね〜、おやつと甘い話が大好きなうちの情報屋! 裏も表もぜーんぶの噂、握ってるんだからねっ!」


「情報はタダじゃないよ〜? でも、おやつが報酬ならちょっとサービスするかも〜?」


「──で、ボルド〜〜! 情報料としておやつちょうだいっ!」


ボルドが苦笑しながらポケットからクッキーを差し出すと、ミネットは猫のように満足そうな顔を見せた。


小柄な体にしなやかな身のこなし。スラム育ちで、情報収集と隠密行動に長けた影の諜報員。

その軽やかな立ち振る舞いと情報ネットワークの広さは、今日も商会の裏を支えている。


「──で、お次はうちの“金庫番”にして“鬼の経理”! パメラっ!」


「呼び方に悪意ない? ねぇ?」


書類を束ねながら現れたのは、眼鏡をかけた真面目そうな女性──が、実はギャンブル好きという裏の顔を持つ、リーフライン商会の経理・パメラ。


「みんなに“無駄遣いするな!”って言いながら、自分はこっそり賭け事でスッてるタイプです!」


「うるさい。私は“計画的リスクマネジメント”を実践してるだけよ!」


「でもパメラ、あのとき結構な額溶かしてたよね〜?」


「──そ、それは昔の話!!」


そんなこんなでやらかしも多いが、根は誠実で仲間思い。

帳簿管理と契約書の山を誰よりも正確に処理する、真の裏方職人なのである。


「そしてラストは──我らが癒しと毒舌の化身、船医のフィオナ先生〜!」


「“毒舌の化身”は余計よ、レイラ社長」


凛とした足取りで現れたのは、純白のコートを羽織った女性──フィオナ。

透き通るような銀髪と氷のように冷たい視線、それでいてどこか母性的な空気を纏っていた。


「フィオナはね〜、ちょっと怖そうだけど……注射も処置も一流! 見た目も声もクールだけど、頼れる船医なんだからっ」


「“ちょっと怖そう”は否定しないのね……」


「でもでも! 怪我したときに“動かないで”って言いながら的確に手を動かしてくれるの、ほんとプロって感じだよね〜〜」


「当然でしょ。命を預かる仕事なんだから、甘えは許されないわ」


船医としての腕前は確かで、多少の荒療治も厭わないプロフェッショナル。

レイラたちの無茶にいつも頭を抱えつつも、実は誰よりも彼らを気にかけている存在──それがフィオナなのだった。


「──で、レイラ〜? まさか私の紹介、忘れてないよねぇ〜?」


椅子の背にもたれながら紅茶をすするのは、どこか飄々とした雰囲気の猫耳の少女。


「ギクッ!? もっちろん忘れてないよー!?い、今ちょうど呼ぼうと思ってたとこなの!


うちの“借金取り”にして“癒し枠かと思ったら一番怖いやつ”! リリィ・ディビット〜〜っ!」


「うふふ、紹介ありがとう? でも“癒し枠”とか言われるとくすぐったいわねぇ」


リリィは猫耳と、一見ふわふわした口調が特徴の猫族──しかし、その柔らかな雰囲気とは裏腹に、

今はリーフライン商会に同乗し、“借金管理”を口実に、レイラと一緒に航海を続けている。


「インベスト商会っていう大きな金融組織の人で、なんか肩書きがすごいらしいけど──私も詳しくは知らない!」


「ふふ、社長の返済が終わるまでは、ず〜っと一緒にいてあげるから♪」


「ひぃ〜〜〜〜〜〜〜!!」


ときにメスガキ、ときに姉のような包容力、ときに“死の催促人”──

レイラにとっての最大の天敵にして、誰よりも頼れる謎多き存在。それがリリィ・ディビットなのである。


「──ってな感じで、うちのメインメンバー紹介、以上っ!」


レイラが息をついて振り返る。


「よ〜〜し! あとは〜〜……」


ぐるりと甲板を見渡し、手をぐっと掲げて叫ぶ。


「リーフライン商会、その他の社員たち〜〜! みんな〜! 準備できてる〜〜!?」


その声に応えるように、船のあちこちから──


「「「はぁい!! 社長ぉぉぉ!!」」」


「「「いつでも出航OKでぇ〜す!!!」」」


「「「社長のためなら、どこへでも〜〜!!」」」


甲板、マスト、ロープの上──至るところから明るい返事が返ってきた。

まさに一丸となったチーム。騒がしくも頼もしい、リーフライン商会の真骨頂である。


……だがそのとき、空気がわずかに変わった。


「……ん? 空、ちょっと暗くなってない?」


レイラが空を見上げる。いつの間にか、陽は水平線の向こうへと沈みかけ、雲が色を変え始めていた。


「気圧が……急に下がってきてるわね」


フィオナが風を読むように、髪をなびかせながらつぶやく。


「西方の空、雲が渦を巻いてる。おそらく、前線だな」


ガルドは鼻をひくつかせるようにして言葉を継いだ。


「それに……空気が湿ってきている。狼獣人の勘だが、ひと雨来るぞ」


ガルドが静かに呟くと、トールが口笛を吹いた。


「ほ〜ら出た出た。嵐の前触れってやつか」


「えっ、えっ!? まだ宝探しもしてないのに嵐とか聞いてない!!」


慌てるレイラをよそに、クルーたちは慣れた様子で動き出す。

ロープを固定し、帆を調整し、必要な物資を船内へと引き上げる。


「全員、配置に戻って。念のため、戦闘と修理の準備も」

パメラが帳簿を片付けながら指示を飛ばし、ミネットはすでに工具を抱えて走っていた。


こうして、和やかな紹介タイムは終わりを告げ──

《ラ・ミスティーク》は、不穏な風の中へと進み始めた。

おかしい、こんなに文章が多くなる予定じゃなかったのに

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