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eternity is lost

始まりの最期

作者: 雪月花


*ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー*


 ふたりがめぐり逢った奇跡は

 

 いつの日か運命になる


 だから

 

 さいごのその日…………


*ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー*





 ーーその後に続く誓いの言葉は何だったのだろう?


 長い長い眠りの中、そればかりを考えていた。


 ここがどこかも気になって、夢の中をひたすら泳ぐ。

 

 自分のあるべき場所を探しているうちに、懐かしい声に呼ばれている気がした。


 暗闇の中で光る星を見つけたように、その声を求めて私の意識は浮上していった。


 ーーーーーー




「起きた?」


 目をゆっくり開けると、その懐かしい声は恋人のユミトのものだった。


「ふわぁぁ……おはようユミト」

 私は上半身をゆっくり起こして伸びをした。

 見覚えがあるような薄暗い部屋の中、寝台の隣に立っているユミトは真顔のまま、じっと私を見つめるだけだった。


「ユミト??」

 いつもと様子の違う彼に、心配になった私はユミトの顔を覗き込む。


「…………」

 彼は何も言わず、私から興味を無くしたように顔を背けると、立ち去っていった。


「っあ、待って。ねぇってば!」

 私は寝台から飛び出して、慌てて彼を追いかけた。




「ねぇねぇ……ここはどこなの?」

 スタスタと歩いていくユミトについていきながら、前を行く彼に投げかけた。


研究所(ラボ)

 無機質な返事が返ってきた。

「え? 荒れ果てているよ。でも確かに、この壁には見覚えが……」

 私は朽ちた壁の一部を立ち止まって見つめた。


 私とユミトはある施設の研究員だった。

 新人の時に、私はユミトの助手として配属された。

 ユミトに新人教育を受けている内に恋に落ち、ふたりで穏やかな愛を育んできた。

 

 優しくて研究熱心なユミト。

 私はそんな彼が大好きだった。


「あ、待ってよ!」

 壁を見ている間に、ユミトが先へ先へと私を置いていっていた。


 追いついた私はユミトの態度に愚痴をこぼす。

「ここは暗くて怖いから、ひとりにしないで」

「…………」

 ユミトは私のことなんか気にせずスタスタ歩き続ける。

「せめて手をつないでよ」

 私は強引に彼の手を取った。


「…………」

 そこで初めて、ユミトが歩くのをやめて隣に立つ私を見た。

 その顔には何も表情が浮かんでいない。


 知っているユミトとは違いすぎて、何だか得体の知れないものを相手にしている気分になった。


「あなた……ユミトなの? 私を覚えてる? 恋人のフルムよ」

 私が眉をしかめて聞くと、ユミトがやっと喋った。

「コールドスリープから起きた時、君を初めて認識した」

「え?」


「…………」

 すると、またユミトがどこかに向けて歩き始めた。


 一応手はつないでくれているから、引きずられるようにして私も足を動かす。


 どういうこと?

 コールドスリープ……

 とっても長いこと寝ていた感覚はある。


 冷静に思い出すと、さっき寝ていた寝台も何かの装置のようだった。


 そして……


 ユミトの……記憶がない?


 コールドスリープの弊害??




 焦った私はユミトに質問を続けた。


「どこに向かっているの?」

「…………」

「何で私たち、ふたりだけなの?」

「…………」


 歩き続けるユミトはチラリと私を見ただけで、何も言わなかった。


 するとその時、研究所(ラボ)から外へつながる扉の前に着いた。

 ユミトがそれを力づくでこじ開ける。

 研究員が近付くと自動で開いていた扉も、他と同じように朽ち果てていたからだった。


「……案外力持ちだね……って、えぇ!?」

 研究所(ラボ)から一歩踏み出したユミトの後ろから、外の光景を見た私は思わず叫んだ。


 外は……

 凍てつく氷の世界になっていた。


 研究所(ラボ)の近くまで湖が広がっており、氷を張ったそれは所々割れて、独特の模様を描いている。

 地面も厚い氷で覆われており、植物が生えている様子なんて見る影もない。

 空には灰色の雲が広がり、頼りない光が銀世界を照らす。

 それを浴びて世界はただただ鈍く光っていた。

 



 変わり果ててしまった外の光景は、この世の終わりかのように感じた。


「あっ…………」

 私は直感した。


 コールドスリープ。

 朽ちた研究所(ラボ)

 生命が存在しない氷の世界。 


 ーー本当に、この世は終わったのだ。




「何でこんなことに……どこいくの?」

 呆然と立ち尽くす私の手を、一切表情を変えないユミトが引っ張った。

 私たちの履いている靴の底が、地表の変化を読み取って適した形に変わってくれた。

 これで氷の上でも難なく歩くことが出来る。


 相変わらず返事のないユミトの向かう先には、小高い氷の丘があった。

 躊躇(ちゅうちょ)することなく彼は登っていった。

 


「ユミト、ユミト……」

 私はその背中に向かって喋りかける。

 

 ……声を出さなければ、私たちの足音以外に音が無い世界になるのが怖かった。


「私たちの他に誰もいないけど、ユミトが居てくれて良かった」


「ユミトさえ居れば寂しくないよ」


「……もしかして怒ってる? 何か悪いことした? 謝るから嫌わないでよ。私はあなたが大好きなの」


 返事なんてなくても、お構いなしに喋り続けた。

 

 そうしなければ、不安で不安で仕方なかった。

 目の前の現実に、自分に起こっていることに、目を背けてしまいたかった。

 

 頭がゴチャゴチャで涙が浮かぶ。


 …………


 どうして、私は寒くないの?


 どうして、私はお腹がすかないの?


 どうして、私は疲れないの?


 おそらく……私は…………




 岩のような氷の地面に視線を落としながら、ゆっくりと瞬きをした。

 目に溜まった涙がポタポタと落ちる。


「ユミト……愛してるよ」

 私の中に残る〝フルム〟らしさに(すが)るように、彼へと愛を囁いた。


「…………」

 

 ユミトはやっぱり何も返事をしてくれない。


 私の言葉だけが、氷の世界に虚しく反響する。


 そのことにより一層悲しくなって、ただでさえおぼつかない足取りがもつれてしまった。


「っうわ!」

 ユミトとつないでいた手を離して、慌てて両手を地面につく。


『大丈夫?』

 研究員時代の優しいユミトの声が聞こえた。

 私が困っている時、彼なら必ず助けてくれた。

 目の前のユミトは……

 もうその時の彼じゃない。


 そう諦めていると、地面を見て這いつくばる私に、()()ユミトが手を差し伸べてきた。

 私はゆっくりと顔を上げて、彼を不思議そうに見上げた。


「……僕の中の〝ユミト〟が言ってる。フルムを助けてあげてって」

 そう言った彼が、口角をほんのちょっとだけ上げた。

「……ユミト……」

 泣き濡れた瞳を見開きながら、ユミトの手を握った。

 すると彼が、その手を引っ張って私を立たせてくれる。


「ありがとう」

「…………」

 ユミトは何も言わずにまた歩き始めた。

 私も大人しくついていく。


 ちょっとだけ思い出した?

 それなら……


「あのね、ユミトーー」

 私は思い付く限り、彼との思い出を語り始めた。

 希望を抱いて、目に浮かんだままの涙を手の甲でグイッとぬぐう。

 研究員時代のユミトを少しでも思い出して欲しかったから。

 

 けれどそれは……彼にとってとても残酷なことをしていたのだと、後になって気付いた。




 ーーーーーーーー


 ちょっとした山のような氷の丘の頂上につくと、ユミトが遠くを見渡した。


「何を見ているの?」

「…………比較的使えそうな研究所(ラボ)を探している。あそこのE-5施設なら何とか稼働しそう」


 そう言われて、ユミトが熱心に見つめる先を私も見てみる。

 けれどそびえ立つ氷山しか見えなかった。


「何も見えないよ??」

 私は隣に立つユミトを見上げた。

「…………」

 彼は無表情のまま、私の頭にポン……ポンと手を置いた。

 そのぎこちない動きに、呆れているのか慰めているのか分からなかった。


 そして私から顔を逸らし、また歩き始めた。

 ずっと律儀に手をつないでくれている彼に、また引っ張られる。


「……まさか、そのE-5施設に向かうの?? 徒歩で!?」

 驚いた私が思わず声を上げた。

 ユミトが私に背中を向けたまま、淡々と答える。

「そうだよ。転移装置で」

「あっ……そうか。そんな物があったね。……動くかな?」

「…………」

「そこは嘘でもいいから、何か言ってよ」

「…………おそらく、動くよ」

「…………」

 

 私たちは登った時と同じように、手をしっかり握り合ったまま氷の丘を降りた。




**===========**


 無事にE-5施設に転移した私たちは、研究所(ラボ)内の様子を確認した。


 予備電源装置もなんとか生きており、所内に明かりがつく。

 ここにあまり来たことがなかった私は、物珍しそうに、ひとりで探索していた。

 すると研究所(ラボ)の地下へと続く階段が目についた。


「……ここは?」

 壁にあるパネルに触れて、地下通路の明かりを灯す。

 その奥に扉が見えた。


「…………」

 吸い寄せられるように私は扉に近付いていった。

 扉の中央には生体認識装置のパネルがあり、研究員の中でも限られた人しか入れない仕様だった。


 私は右手を上げて、その生体認識装置へと近付ける。

 意識の奥で〝ここに何かがある〟と感じていた。


「触るなっ!」

 いつの間にか近くに来ていたユミトが、私の右手を掴んで阻止した。

「!?」

 珍しく語気の強い彼に驚いて、見張った目を向ける。


「…………壊されたら困る」

 ユミトが真顔でポツリと呟いた。

 心なしか、冷ややかな目線を私に向けているように感じてしまう。


「……ごめんなさい」

 私はうつむいてシュンとした。


 ユミトは……〝ユミト〟の記憶がない分、私たちが何故ここにいるのか知っていそうだった。

 私は〝フルム〟の記憶がある分、何故ここにいるのか分からない。

 そのことをユミトに聞いても、彼は(かたく)なに教えてくれなかった。


 多分、賢い彼に判断されたのだろう。

 この世界で私は〝役立たず〟だと。


 へこんでいる私にユミトが声をかける。

「……ここから離れよう。上に仮眠室があるから、今日は休もう」

 彼は掴んでいた私の手を優しく握り直すと、その手を引いて歩き始めた。


「…………」

 私は無言でついていった。

 

 仮眠室でじっとしておけって言われちゃった。

 遠回しに何もするなって。


 ……だって、私たちは……


 眠りも休息も必要としないのだから……




 私は、自分の体については誰よりも理解していた。

 ユミトとフルムの……研究内容だったからだ。

 



 ーーーーーーーー


 1人だけ仮眠室に押し込まれた私は、大人しくしているハズが無かった。


 頃合いを見て、部屋をそっと抜け出しユミトを探す。


 彼が何をしているのか気になったのと、少しだけ置いていかれそうな気がして怖かった。




 暗い通路を壁伝いに歩いていると、開いた扉から中の明かりが漏れている部屋を見つけた。

 扉の電気回路の繋がりが悪くて、ユミトが無理に開けたようだった。

 

 でも、彼の居場所を見つけやすくて助かった。


 そんなことを思いながらその部屋に近付くと、中からユミトが誰かと話しているのが聞こえた。

 専用の通信回線を使って、他の星の誰かと喋っているようだ。

 

 …………


 私は聞き耳を立てた。




β(ベータ)にはアクセス障害が起きており、使命について覚えていません。その代わりベースの人格が目覚めています」


『……っなんてことだ……』


「起動プログラムも反応しませんでした。使えそうにありません。もともと僕たちはどちらかが予備(スペア)です。僕だけで使命を果たします」


『2人とも稼動しているのなら、揃って行なう方が確率があがるのだが……』


「ですが今のβ(ベータ)に無理矢理、使命を理解させるのは……」


『……気持ちは分かるが…………おや? そういう君にも人格が目覚めているんじゃ……?』


「いいえ」


『……………………そうか。……では速やかに使命を遂行するように。健闘を祈る……』




 ユミトの誰かへの報告を聞いた私は、その場を静かに離れた。



 ユミトが1人で何かをしようとしている!


 それを私に隠している!!



 歯がゆい思いを抱えた私は、ある程度ユミトのいる部屋から離れると、バタバタと走り始めた。

 さっき見つけた地下への通路に向かう。



 このまま役立たずでいたくない!


 私も……ユミトと一緒に……




 私はユミトに止められた、あの扉の前に立った。


 後ろから誰かが駆けてくる足音がする。

「フルムッ!! やめろ!! そんなことをすれば君までっ……!!」

 

 私の慌ただしい足音で勘付いたユミトが追ってきていた。


 私は彼を振り返りながら、扉の生体認識装置に手を伸ばす。

「私は知りたいのっ!! ここにいる意味を!! ユミトひとりで行かないでっ!!!!」

 彼への思いを込めて、認証パネルに手のひらを合わせた。


 するとパネルが白銀に光り、そこから扉の端へと電気が流れたように、回路内を光りが走り抜けた。

 そして音もなく扉がスライドする。


 少しずつ部屋の中の光が私のいる通路を照らした。

 私はユミトに引き戻されないように、素早く中へと入る。




「ッ!!」

 部屋の中の光景に、私は息を呑んだ。

 

 様々な大きさをした複数の空中ディスプレイが、薄暗い中を宙に浮かんでいた。

 ゆらゆらと左に右にと移動しており、水中で泳ぐ魚を見ているみたいだった。


 そのディスプレイの中には、この星が終わりを迎えるまでに辿(たど)った軌跡の映像が映っていた。


 星府の衝撃的な発表。

 混乱を極める民衆。

 大々的な宇宙船での移動。

 残されたものたち。

 その末路……


「これは……」

 私がフラフラと前に向かって歩くと、その拍子に何かを踏んだ。

 地面を見ると何かの装置だったようで、私が立っている丸い部分がまばゆく光る。


β(ベータ)-145286を認識しました。起動プログラムを開始します』


 無機質な機械の声が部屋に響き渡った。

 

 それと同時に私の中で、まるで「カチッ」と何かのスイッチが入ったような感覚がした。


 途端に胸の奥が熱くなり、体中を血液が巡るかのように温かいものが駆け回る。

 

 私は自然に目を閉じた。


 

 ……そうか……


 私は…………



 薄っすらと。

 私が何のためにここにいるのか、理解し始めていた。


 目を開けると、ちょうど正面に真っ暗なパネルが浮かんでいる。


 何かを感じてジッと見ていると、音声だけがそこから流れてきた。


『……ふたりがめぐり逢った奇跡は』


 ーー()()声だ。

 

『いつの日か運命になる』


『だから』

 

『さいごのその日』


『ーーーーーー』




 ーー()()声が、誓いの言葉を最後まで奏でた。

 



 それで全てを思い出した。

 

 私は……

 ユミトは……




「……フルム……」


 呼ばれて振り返ると、悲しげな表情をしたユミトがいた。

 

 私は彼をしっかりと見つめ、向かい合って立った。

 

 さっきの誓いの言葉。

 あれは、私達ふたりの使命の言葉。



「思い出したの。私たちの使命を。……ユミトは悲しい未来を、何も分かっていない私から隠そうと……私だけは助けようとしてくれていたんだね」


 私の頬を静かに一筋の涙が伝った。


「…………」

 ユミトは相変わらず無言だった。

 けれど彼はもう無表情じゃなかった。

 泣きそうな顔をして見つめるその瞳に、私に対する愛情がこもっている。

 

 私はそんな彼に穏やかに笑いかけた。

「今はもう〝ユミト〟の記憶がしっかりあるんでしょ? ユミトは変わっていなかったんだね。私の大好きなユミトのまま……」


「だからフルムには、何も知らないままでいて欲しかったのに」

 ユミトが切なげに笑いながら、私をそっと抱きしめた。

 

 私は彼の腕の中でフルフルと顔を横に振った。

「私をひとりにしないで。さいごまでユミトと一緒にいたい」

 私は彼を抱きしめ返した。


 涙があとからあとから溢れ出す。


「うん。誓い(使命)を一緒に果たそうか」

 ユミトが私をきつく抱きしめなおす。



 彼の言葉通り、これからはずっと一緒だという気持ちを込めて、私たちはいつまでも抱き合っていた。




**===========**


 ユミトと私は、大きな大きな穴の(ふち)に並んで立っていた。

 地面に開いたその穴は、底なんて見えない。

 ただ黒い空虚な空間が広がっている。


 その奥からは、空に向けて風が吹いていた。 

 舞い上がる風を受けながら、ユミトと私は手をつなぐ。


「ごめんね、私のせいで……私に引きずられてユミトまで〝ユミト〟が出て来てしまったんだよね」

 私は隣に立つユミトを見上げた。

 彼の前髪が風に乗ってふわりと浮く。


「フルムのことが思い出せたから良かったよ」

 ユミトが穏やかにほほ笑んだ。

 それは私の大好きな笑顔だった。


「ありがとう。けれど、何も知らずに使命を果たせた方が、こんなに怖くなかったのに……」

 私は穴の奥をチラリと見た。

 

 体が、気持ちが、すくみ上がってしまう。

 

 そうならないために〝フルム〟と〝ユミト〟は眠っているはずだった……

 

 私の瞳にジワリと涙が浮かぶ。

 心の底では逃げ出したくてたまらない。

 思わずユミトと繋いでいる手にギュッと力を込めた。


 そんな私にユミトが優しく語りかける。

「またこうしてフルムと過ごせて幸せだった。それだけで意味があったんだよ」

 ユミトが私をしっかり見据えて、強く言い切ってくれた。


 その迷いのない言葉に私は嬉しくなった。

「うん……そうだね。私もユミトと過ごせて幸せだったよ」

 私はユミトに向けて泣き笑いを浮かべた。

 



 そして見つめ合ったまま、私たちは誓いを立てた。


 ふたり揃って言葉を紡ぐ。

 


『ふたりがめぐり逢った奇跡は』

 

『いつの日か運命になる』


『だから』

 

『最期のその日』


『ひとつに還ろう』




 ーー私たちはもともと、ひとつだった。

 

 それをふたつに分けて、お揃いのものを胸に宿している。




 ……そろそろ行かなきゃ。


 見つめ合ったままの私たちは、さいごに柔らかく笑い合った。

 まるでこれからも幸せでいられると、信じてやまない恋人たちのように。


 そしてーー




 穴の中にふたりで身を投げた。

 離れないように硬く手を繋いだまま。


 星を起こすために

 この胸の温かいものを届けに

 奥深くへ

 どこまでも

 どこまでも

 堕ちていった。




 全ての生命のアダムとイヴになることを夢見て。



 


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