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05 フレンド/:-]

ありがとうございました。

 暇な休日。

 出かける用事もなければ、意味もなく出かける資金にも乏しい。することもなくリビングでまったく興味惹かれない健康器具の通販番組を観ていたら、友人が遊びに来るからという理由で父ともども妹に追い出されてしまった。

 釣りに行くか? という父の誘いを断り代わりに受け取った臨時収入で駅前デパートのフードコートに居座ることにした。

 ハンバーガーとポテト、食品売場で買った紅茶をトレイに乗せて歩く。

 休日の昼時。いつもなら混雑していてカウンター席しか空いていないのだが、今日はなぜだか空席が目立っていた。

 幸運なことだ、と適当なテーブル席に腰掛ける。

 鞄から文庫本を取り出そうとして、腕時計の時刻が目に入る。


「……ログインだけでもしとくか」

 

 スマートフォンを取り出し、アプリを起動させる。

 最近、会話をするようになった来栖さんに勧められて始めたゲーム。

 他のプレイヤーとギルドを組んで領地の拡大を行っていき、他のギルドとの共闘や争いを繰り返す。

 課金はスキンや倉庫拡張などの要素だけなので、無課金でも十分に楽しめる。

 僕の加入するギルドは十人程度のエンジョイギルド。

 ギルド長はサービス開始当初からプレイしているようだが、他のゲームをメインにしているらしく片手間のプレイらしく、ギルドメンバーにも熱心なプレイを求めていない。

 

[キーホルダー]がログインしました

[キーホルダー]こんにちわ


 キーホルダーは僕のゲーム内でのユーザーネーム。


[はぁみ]こんにちは


 挨拶すると、すぐにギルドメンバーのはぁみさんが挨拶を返してくる。

 このはぁみさんは不思議な人で、ゲームのプレイ自体はついこの間始めた僕とどっこいなのだが、ギルド設立当初からのメンバーでどの時間にログインしても必ずいる、という不思議な人だ。

 そういう僕もゲームに熱心なわけではない。

 デイリー任務をこなして、一応のギルドメンバーとしての義務だけをこなしておく。


[はぁみ]キーホルダー様


 デイリー任務を終えて、ゲームをログアウトしようとしたら唐突にはぁみさんがつぶやいた。

 珍しいこともある。

 はぁみさんはギルドメンバーに挨拶をするだけで、それ以外での会話はいままでしているところを見たことがない。

 二十四時間常にログインして、会話も挨拶だけということから他のギルドメンバーははぁみさんをbotではないか、と揶揄していた。


[はぁみ]キーホルダー様

[キーホルダー]なんでしょうか?

[はぁみ]ふふふっ、ようやく見つけました

[キーホルダー]何かレアアイテムを見つけましたか

[はぁみ]ナニカを見つけました。見つけました。

[キーホルダー]何か?

[はぁみ]見つけました これでワタシも吊るしてもらえる

[キーホルダー]?


 何のことだろう。

 まったく理解ができない。


[はぁみ]見つけました 見つけました 見つけました 見つけました 見つけました 見つけました 見つけました 見つけました 見つけました


 狂ったように『見つけました』と繰り返す。

 見つけました、とは何のことなのだろうか。

 

[はぁみ]見つけました ミツケマシタ


 よっぽどのレアアイテムを見つけたのだろうか。

 しかしそれにしてはどこか不自然なはぁみさんのコメントに気持ち悪さを感じてゲームを閉じることにする。

 スマホを鞄にしまった時、目の端にソレが映った。

 赤いスカート。

 女性が僕の席の前に立っていた。

 知り合いだろうか。こんなに席が空いている中で、僕の席の前にじっと立っている。

 

「あ」

 

 あの、と顔をあげようとして気づく。

 目の前の女性は何かをつぶやいている。

 喧噪に消えてしまいそうなそのつぶやき。意識すると耳に入ってくる。


「………した。み………ました」


 かすれるような声。


「みつけました。見つけました」


 ゾッとする。


「キーホルダー様。み、み、み、見つけました。ミツケマシタ」

「は、はぁみさん?」


 顔をあげられない。

 あげたくない。

 なぜだかわからないが見てはいけない、と本能が告げている。


「見つけました。見つけました。見つけました。見つけました」


 彼女のつぶやきは続いている。

 僕のことをじっと見つめている視線をしっかりと感じる。

 

「わ、わ、わわ、ワタシのことも吊るして」


 声が近づく。

 前のめりになって僕に顔を近づけてきている。

 

「吊るして。見つけました。吊るして」


 意を決して顔をあげる。

 何かが一瞬眼前に広がっていた気がする。

 しかし驚き瞬きをして見えたのは見知った顔。


「あら、ツナギ君。こんにちは」

「アイ」

「向こうの席で一緒に昼食にしましょう」

 

 二人掛けの席を指さし、促すようにこちらに手を差し出す。


「さぁ、いきましょう」


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